「政治家の事務所って、いい人だけ付き合っているだけじゃあ選挙、落ちちゃうんですね、小選挙区だから。かなり間口を広げて、来る者拒まずってしないと当選しないんです」

 甘利氏は、父・正氏の地盤を継いで1983年の衆院選で初当選し、現在11期目。選挙は盤石ではなく、小選挙区で敗れ、比例復活したことも2回あった。

 だが、安倍政権では重用され、頭角を現した。第1次安倍内閣で経済産業相に就任。第2次内閣でも経済財政相に納まり、アベノミクスを仕切り、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の顔となってきた。

 一方、金脈は強力だった。14年1月には、原発を持つ電力会社9社が甘利氏のパーティー券を水面下で分担して購入していたことが発覚。収支報告書に購入者名の記載義務のない1回20万円以下で、甘利氏が経産相に就いた06年以降、各社が年間数百万円ずつ購入していた。

 甘利氏は、大臣規範で自粛とされている大規模な政治資金パーティーをやめることもなく、13~14年の2年間で、収入1千万円以上のパーティーを6回開き、計9286万円を集めていた。この金脈に支えられ、14年の収入は全国会議員中4位の1億8197万円にのぼった。

 政治資金オンブズマン共同代表で神戸学院大学の上脇博之教授(憲法学)は、こう指摘する。

「年間で1千万円以上のパーティーを『大規模』と考えるべきだが、政治資金規正法12条に照らし、1件で1千万円以上のパーティーが『大規模』とも考えられる。大臣就任後さらに規模が大きくなっており、道徳観念のなさを感じる」

 だが、いま聞こえてくるのは「甘利さん、かわいそう」「秘書の質が悪かっただけ」と同情する声だ。自民党の高村正彦副総裁も「罠を仕掛けられたのではないか」と擁護した。辞任後の各紙の世論調査でも、内閣支持率は横ばいか上昇している。

AERA  2016年2月15日号より抜粋