しかし、そんな高い「タワー」を一体どうやって建設するのか。
「地上の構造物と真逆の造り方をします。上から垂らすのです」(石川さん)
まず、高度3万6千キロの静止軌道にケーブルを打ち上げる。無重力状態にあるそこから重さ20トン分のケーブルを赤道に向けて垂らし、さらに上にも延ばしていく。
ケーブルの素材もポイント。地球に近づくにつれて生じる重力や、地球の自転による遠心力で引っ張られるため、細くても強度のあるカーボンナノチューブを使う。建設費
10兆円。
「ロケットで物を運ぶと1キロあたり100万円かかりますが、宇宙エレベーターなら1万円と試算しています。投資に見合う利益は得られる」
NASAで客員研究員として働いた宇宙生物学の専門家でもある石川さんは「今の技術レベルは、完成に必要な100のうちの1かもしれない。でも、飛行機でもリニア新幹線でも、すべてそういうレベルから積み上げて実現した。チャレンジする価値はある」と意気込む。
宇宙エレベーターの建設開始は30年の予定。「エレベーターが完成したら、次は微生物で火星の土壌を改良して人間が住めるようにしたい。宇宙最大の土木事業になるでしょう」(石川さん)
※AERA 2016年1月11日号より抜粋
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