一方、肝心のもんじゅも事実上の「レッドカード」が見え隠れする状況に追い込まれている。試験運転中に燃料交換用機器を炉内に落とすトラブルで2010年から長期停止中。その後も約1万点の機器の点検漏れが発覚し、業を煮やした原子力規制委員会は11月13日、運営主体を日本原子力研究開発機構以外に代えるよう勧告した。代わる運営主体が見つからなければ、廃炉も現実味を帯びる。

●世界の心配は核兵器への転用

 ただ、国際的に心配されているのは、日本の核燃料サイクルの破綻ではない。プルトニウムが核兵器に転用される恐れだ。テロリストが盗み出して核兵器を作る。もしくは、再処理施設を核兵器製造の隠れみのにする国家が出るかもしれない。

●テロリストには十分の品質

 米ローレンス・リバモア国立研究所の国家安全保障政策研究所副所長を務めるブルース・グッドウィン氏は、最近東京で開かれたシンポジウムでこう断言した。

「核兵器を作る初期の技術があれば、再処理されたプルトニウムから広島型原爆の破壊半径の3分の1以上になる核兵器が作れる。原子炉で生まれたプルトニウムでは核兵器が作れないというのは誤解に過ぎず、現に米国では62年に成功している」

 実際、複数の核の専門家にも聞いたところ、テロリストが脅しに使う程度には十分な威力を発揮する核兵器が、再処理されたプルトニウムから作れるという。コンピューターの計算能力が飛躍的に向上したためだ。

 国際原子力機関(IAEA)は、プルトニウムが8キロあれば核兵器が製造できるとみている。日本国内の保有量は1350発分に相当する。

 IAEAには、核物質の兵器転用を防ぐ目的で査察に入る権利が認められているが、

「査察に入るまでは準備などに4週間が必要。一方、核兵器転用には1~3週間あれば十分。これでは間に合わない」(米・核不拡散政策教育センター理事のヘンリー・ソコルスキー氏)

 90年代にホワイトハウスで科学技術政策局次長を務めたフランク・フォンヒッペル米プリンストン大学名誉教授は、強い調子で指摘する。

「日本の核施設は武装した警備員がいないなど、セキュリティーレベルが高いとはいえない。警備員が銃を携帯している米国ですら、核施設の警備体制を検査する模擬攻撃で特殊部隊が原発に潜入し、プルトニウムを“盗み出す”ことに成功してしまったことが一度ならずある。米国はすでに再処理をやめた。日本が再処理を続けようとするのは危険すぎる」

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