今回の事件で、少年が一線を越える引き金となったのは何だったのか。取材で浮かび上がってきたのが、殺害された祖母の存在だ。少年はまず、自宅の1階で祖母を、その後に2階で母親を刺殺している。

 一緒に暮らしていた祖母は、少年をかわいがる一方、厳しい面も見せていた。とくに自分の息子、つまり少年の父親(50)と常に比較していたという。父親は近所の評判もよく、町会では会計担当役員に自ら名乗り出たこともある。事件当時は、県外に単身赴任していた。

 近所に住む主婦は、祖母が少年の父親のことを「自慢の息子」と誇らしげに言い、「孫は息子に比べてできない」と、ぼやいていたことを覚えている。また別の主婦によれば、祖母は、ゲームばかりしている少年のスマホを取り上げたこともあったという。

 少年はこの春、県内の実業系高校に進学するが、第1志望校ではなかったようだ。祖母は、友人の女性に少年の進学先を聞かれたとき、「知らない」と、そっけなく答えたという。

 先の碓井教授は、祖母の少年に対する過剰な期待が、殺害につながったのではないかと見る。

「父親や長男が優秀だと、その家庭では、それが当たり前になる。しかし、親が優秀だからといって、子どもも優秀とは限らない。祖母にすれば、自分の息子を育てたように孫を育て、期待もしてきたつもりでも、少年はプレッシャーで極限状態に追い込まれていたのではないか」

AERA 2015年6月1日号より抜粋