フリーマン(中央)は、「コーヒー界のアップル」と呼ばれることを、光栄だとしながらも、やんわりと否定する(撮影/写真部・工藤隆太郎)
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フリーマン(中央)は、「コーヒー界のアップル」と呼ばれることを、光栄だとしながらも、やんわりと否定する(撮影/写真部・工藤隆太郎)
細部にまで妥協を許さないものつくりの姿勢。何より、行列してでも飲みたいと思わせるメディア戦略。ブルーボトルのソーシャルメディアを駆使したブランディングは、ジョブズを彷彿させる(撮影/写真部・工藤隆太郎)
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細部にまで妥協を許さないものつくりの姿勢。何より、行列してでも飲みたいと思わせるメディア戦略。ブルーボトルのソーシャルメディアを駆使したブランディングは、ジョブズを彷彿させる(撮影/写真部・工藤隆太郎)

「コーヒー界のアップル」の日本第1号店がオープンした。「鮮度」と「品質」を何よりも大切にするスタイル。日本でも上陸するやいなや大きな話題になるほど、人気を集めている。

 2月6日。昔ながらの風情を残す下町、清澄白河(東京都江東区)に誕生したブルーボトルコーヒーの日本第1号店の店頭は、平日の早朝にもかかわらず徹夜組を合わせておよそ300人のファンと報道陣でごった返していた。

 2002年、ブルーボトルコーヒーは、米国サンフランシスコ・ベイエリアの中核都市オークランドで産声をあげた。異色の経歴を持つ創業者であり現CEOのジェームス・フリーマン(49)は元クラリネット奏者。

 創業からわずか13年で米国でも一目置かれるブランドに急成長を遂げた何よりの理由は、フリーマンが作り出すコーヒーの「鮮度」と「品質」だ。自家焙煎した豆は48時間以内に使い切ることを徹底し、どんなに店が混雑していても、全て注文を受けてからバリスタが一杯ずつ丁寧にドリップする。

 当然、混雑時には行列が絶えない。けれども、客を待たせてでもおいしいコーヒーを提供したいというこだわりと、完璧な一杯を目指して信念を貫くその姿勢が多くの支持を集めた。

「音楽とコーヒーは、感性を頼りに細部までこだわる点で共通している。若き日に音楽に傾けた、もしくはそれ以上の情熱を、一杯のコーヒーに見いだすことができたのです」(フリーマン)

 清澄白河に続き、3月に青山、その後に代官山への出店が決定している。ブルーボトルコーヒーが日本進出にあたって人材募集をしたところ、わずか8人のスタッフ募集に対して約500人の応募があったが、正社員として採用されたのは経験者1人のみ。この狭き門を突破し、正社員として清澄白河店リードバリスタに抜擢された向山岳(27)は言う。

「文化も国籍も違うスタッフが、同じ志の下、ひとつの味を生み出そうと努力をしています」

AERA 2015年3月9日号より抜粋