さまざまな転機が40歳前後に押し寄せる。人生の後半戦にうまく向き合う方法はあるのか(撮影/写真部・外山俊樹)
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さまざまな転機が40歳前後に押し寄せる。人生の後半戦にうまく向き合う方法はあるのか(撮影/写真部・外山俊樹)

 右肩上がりの時代なら、40歳といえば、会社の中でポストと給与が用意され、管理職となって活躍できる「会社員人生のハイライト」が始まる年代だ。

 だが、いまの40歳前後は違う。就職氷河期にやっとの思いで入った会社は、日本の「失われた20年」の中でコストカットやリストラを続け、いい思いをしたことがない。昇進を目指してあくせくするよりも、省エネで現状維持して会社にい続けたいという「心の定年願望」が蔓延しているようだ。

 育児休業から復職した研究職の女性(41)は、熾烈な出世競争を横目で見てきてつくづく嫌気がさしている。たった3人の会議を、時短勤務をしている自分が帰宅した後に設定された。男性上司2人の嫌がらせとしか思えなかった。「お荷物」で結構。仕事から家庭に、完全にギアチェンジした。

「頑張って勉強すれば何とかなる、と教えられてきたけど、どうにもならない。クビにならない程度に与えられた仕事を淡々とこなし、出世せずに定年を迎えたい。退職金だけが楽しみです」

 システムエンジニアの男性(38)は、プログラムやマシンを触るのが好きで、企業の社内ネットワークの敷設や保守点検の現場一筋。会社から再三、管理職の打診があったが、断ってきた。部下のマネジメントはもう、やりたくないのだ。
 
 30代前半で、20代の部下を受け持ったことがある。仕事はできたがプライドが高く、手を焼いた。先輩面するのも性に合わなかった。つい最近、転職エージェントからヘッドハンティングの電話がかかってきた。年収700万円。いまの年収から200万円アップするオファー。だが、それも管理職だったため、断った。

AERA 2014年11月3日号より抜粋