特定秘密保護法案に反対する市民らが国会を取り囲む中、自民・公明両党は参院審議を強行した (c)朝日新聞社 @@写禁
特定秘密保護法案に反対する市民らが国会を取り囲む中、自民・公明両党は参院審議を強行した (c)朝日新聞社 @@写禁

 安倍政権が特定秘密保護法案の成立に突き進む。説明責任を放棄し、衆参両院で強行採決を連発。民主主義は傷ついた。周囲からはこれを危惧する声も多く、官僚も悲鳴をあげる。

 小泉政権時代に防衛庁官房長や内閣官房副長官補を務めた柳沢協二氏(国際地政学研究所理事長)は指摘する。

「秘密保護法がないと米国から情報がもらえないという説明は、ウソか誤解としか思えません。情報源や兵器の性能、作戦内容は守るべきですが、情報を基にした判断や政策は積極的に公開すべきです。秘密保護法と日本版NSC(国家安全保障会議)、集団的自衛権行使容認を合わせた『安保版3本の矢』を、なぜ今やるべきなのか。具体的な説明が全くない。安倍首相は『第1次政権でやり残したことがある』と進めているようだが、当時とは変化した客観情勢を無視し、イデオロギーに基づく政治を進めるのは非常に危うい」

 ふだんは情報をリークする側の官僚も危ないと感じている。

「情報漏洩を防ぐなら、それに特化した法律にすべきでした。マスコミを牽制する効果もあるでしょうが、官僚の萎縮効果の方が大きい。政策を作ったり広めたりすることを考えても、いい効果があるとは到底思えません。暗黒時代の始まりです」(内政官庁の若手官僚)

 日本弁護士連合会の斎藤裕弁護士(秘密保全法制対策本部事務局次長)は、

「正当な内部告発を抑止し、取材や市民団体の調査活動なども萎縮する可能性がある。その結果、国民の知る権利が制限されてしまう恐れがある」

 と警鐘を鳴らす。

AERA 2013年12月16日号より抜粋