乱高下を繰り返していた日経平均株価が、5月下旬から下落し始めている。

昨秋からアベノミクスを支えてきた外国人投資家は、10兆円近く株を買い越してきたが、5月から売りに転じた。シンガポールを拠点とする米カリスマヘッジファンドのジム・ロジャーズ氏は、5月の大型連休明けに日本株をほぼすべて売り払ったといわれる。いまや株も為替もマネーゲームの場となり、国民全体が乱高下する相場に一喜一憂する状況だ。

 浜矩子・同志社大学大学院教授が自著『「アベノミクス」の真相』(中経出版)で、こう指摘している。

「妖怪アベノミクスの最も怖いところは、人々の成長待望感と閉塞脱却願望につけ込んでくるところにある」

 浜氏は同書で「黒田総裁の金融緩和は成功した」「円安で日本経済は復活する」「アベノミクスで消費が増える」といった多くの“俗説”を、「すべてウソだ」とも断じた。

 その理由は簡単だ。安倍政権が打ち出す政策の数々は、単に「浦島太郎のように古い日本にバックしようとしている」(浜氏)だけだからである。60年前の自民党に先祖返りしたかのような公共事業至上主義に、円高頼みの経済対策。そしてこの10年間、何度やっても効果がなかった「金融緩和」に固執し、「人からコンクリートへ」「福祉から防衛へ」「地方から中央へ」に逆戻り。株価だけを沸騰させる官製バブル政策というのが本質であり、単なる「世論操作」に過ぎないというのだ。

 BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストも、こう指摘し続けてきた。

「アベノミクスの最終的な帰結は財政破綻確率の上昇で、長期金利が急騰することで限界に達する。株価下落は、アベノミクスの危うさを示したものです」

AERA 2013年6月24日号