林:タクシー代、あったの?

田原:たぶんくれたと思う。

林:山梨から来た赤いトレーナーのアンチャンに、「行きなさい」ってタクシー代出してくれたんだ。

田原:その人、秘書の方で、けっこう力がある方だったんですよ。「今からこういう子が行くから見てやってください」って電話してくれたみたいで、有楽町の日劇の楽屋口でジャニーさんと初めてお会いしたんです。

林:なんて言われたんですか。

田原:「僕、いま忙しいから、ショーを見てなさい。2階の席、空いてるから」って劇場に入れてもらったんです。ショーが終わったら、近くの洋食屋さんでナポリタンをおごってもらって、「ユー、何になりたいの?」「僕、スターになりたいんです」「じゃ、来週からレッスンに来なさい」って。

林:そんな話ってあるんだ。それだけの自信があるってことは、たとえば中学生のときに女の子にすごく騒がれたとか、学校で人気者だったとか、何か成功の記憶があったわけでしょう?

田原:なんとなくね。バレンタインとか、けっこうもらえてるなっていうのはありました。いつもチャリで学校通うのに、バレンタインが近くなると、わざわざ電車で行って、駅で待っている山梨英和の女の子にチョコレートもらったりして。アハハハハ。けっこう目立ってました。校則も気にせず、カッターシャツにミッキーマウスのワッペンみたいなのをつけて学校に通ってましたからね(笑)。

林:山梨では目立ってるんだという自信があったんですね。

田原:ジャニーズの人ならみんなそれなりにあるんでしょうね、選ばれし人っていう気持ちは。僕、母子家庭で、姉2人、妹1人の4人きょうだいで、何となく甲府工業に入って、将来何になるんだろうって、あまりイメージを持てなかったんですよ。だから、経済的余裕もないから大学なんて行けないし、サラリーマンになるのかな、なんて漠然と思っていました。

林:そうなんですか。

田原:でも、そこからジャニーズに入ろうと思ったのは、女きょうだい3人の影響が大きいと思います。たとえば、家でテレビのチャンネル権、負けるんですよ。女の子ばっかりだから。

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