秋の衆院議員選挙の前哨戦とみられた東京都議会選挙は、自民党が議席を倍増させるという大方の予想と異なり、自公で過半数に届かない「大敗北」(自民党都連関係者)となった。都議選の結果は、今後の政権運営や総裁選にどんな影響があるのか。菅義偉首相の官房長官時代の”天敵”だった東京新聞の望月衣塑子記者に話を聞いた。
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自民党は都議選で何度か世論調査をやっていますが、直近の獲得予想は50議席でした。これは若干甘めの見通しだったにせよ、最低でも40議席以上は獲得すると見込んでいたはずです。でも、フタを開けてみれば33議席。自民党としては”惨敗”でしょう。
選挙の空気がガラッと変わったのは、小池百合子都知事が過労で入院した6月22日からの8日間です。
私は選挙戦最終日の7月3日に、「都民ファーストの会」のある候補者の事務所に張りついて取材していました。すると、事務所のスタッフからはこんな話を聞きました。
「候補が演説をすると、以前はヤジがバーンと飛んで来たけれど、小池都知事が入院してからはヤジが消えた」
本質的には小池氏は五輪開催推進派ですから、普通だったら、都民ファの候補者も「コロナ禍なのに何をやっているんだ!」というヤジにさらされることもあるわけです。
しかし、あの小池氏がまさか弱った姿をみせ、退院後の会見では「倒れても本望」など言って同情を誘った。そして最終日には体調が万全でない状態で、約10選挙区も回って候補者の激励に駆けつけた。マイクを持った演説こそなかったものの、その効果は絶大でした。
こう動くと決断したのは、彼女の独特の勘でしょう。有権者の同情をかっさらっての挽回は、まさに「小池流」の老練さでした。結局、私が張りついて取材した都民ファの候補も当選しました。
立憲民主党は改選前の8議席から7議席プラスして15議席になったものの、事前予測では24議席と予想されていたので、手放しで喜べる数字ではありません。自公への批判票はどちらかというと共産党ヘ流れ、共産に拒否感がある人の票が都民ファへ流れたという構図だったと思います。