「大吉原展」のHP(https://daiyoshiwara2024.jp/index.html)から
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は3月から開催される「大吉原展」について。

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 来月から東京芸大美術館で行われる予定の「大吉原展」。吉原を描く美術作品を通して吉原を歴史的に検証しその全貌に迫る……ということなのだが、そのPRが衝撃的に軽かった。HPには「ファッションの最先端」「イケてる人は吉原にいた」「エンタメ大好き」といった文言の羅列に、ポスターには英語で「YOSHIWARA THE GLAMOROUS CULTURE OF EDO’S PARTY ZONE」と記されていた。グラマラスなパーティーカルチャーだぜー!ヨ・シ・ワ・ラ!な、ノリである。不適切にもほどがある、というものだろう。

 いち早くこの問題を指摘したのは、マンガ家の瀧波ユカリさんだった。「ここで女性たちが何をさせられていたかがこれでもかとぼやかされた序文と概要。遊園地みたい」と的確に批判し、その後も、この問題についていちいちごもっとも!な発信をされ続けた。最終的に「大吉原展」のHPはかなりトーンダウンし、慎重な調子のテキストが掲載されるまでに至った。

「(前略)本展は、今まで『日本文化』として位置づけられてこなかった『吉原』が生み出した文化を、美術作品を通じて再検証し、江戸文化の記憶として改めて紹介する趣旨で開催を決定いたしました。 しかしながら一方で、上述しましたように、本展がテーマとする、花魁を中心とした遊廓『吉原』は、前借金の返済にしばられ、自由意志でやめることのできない遊女たちが支えたものであり、これは人権侵害・女性虐待にほかならず、許されない制度です(後略)」(「大吉原展」HPから)

 吉原が日本文化としては位置づけられていなかったという説明に驚きつつ、2020年に国立歴史民俗博物館で行われた「性差の日本史」展を思い出した。「性差の日本史」は、吉原をはじめとする遊廓を、“語り継ぐべき日本文化”としてではなく、”語り継ぐべき史実“として体系的に見せた初めての試みだった。

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史実から見た遊廓の残酷さ