作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は職場で性加害を繰り返しSNSに投稿していた男性に対し、女性たちが起こした行動と、そこから考えたことについて。
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「あなた(女)が嫌がるのを喜ぶ男がいるんだよ。やばいよ。でも、それがいい金(ビジネス)になるんだ」
今年のアカデミー賞作品賞候補作品「哀れなるものたち」のなかに、こんなセリフがあった。このセリフ一つで、性を巡るやばいことの様々が説明できるように感じた週末だった。
3連休の間に、SNS上では性に関する革命的なことが起きた。
性暴力に怒る女性たちが起こした行動により、一人の男性性虐待者の職場と生活圏が特定され、警察が動く事態になったのだ。
男は、職場の女性トイレに侵入し、使用済みナプキンに精子をかけたり、女性社員の私物に精子を混入したりする動画や画像を公開していた。女性の後ろ姿を撮影しては「メス」と罵るなどしていた。この男にとって女性は徹底的に「性的娯楽物」であり、彼がしたことは女性へのヘイトクライムというべきものだろう。
ネットの世界にはこの男のような性虐待・女性へのヘイトクライム投稿が溢れている。いくら通報してもSNS管理会社が積極的に動くことは少なく、警察が動くなどさらに稀で、加害者が罰せられることはほぼなく、むしろ通報することで被害者が晒されるリスクもある。今回も最初はSNS管理会社に通報したり、フォロワーが多いアカウントに情報提供したりしても無反応だったという。男の行為を許さなかったフェミニストたちの執念が現実を動かしたのだ。被害者の負担は言うまでもないが、ネット上の性虐待を監視し通報する作業を続けることは、どれほどの心的負担があることだろう。本来ならば、女性へのヘイトクライムを定義し、オンライン上の性虐待・ヘイトクライムを処罰できる制度を行政が率先して行うべきだろう。