急激に感染が拡大する新型コロナ。「第3波」の背景にあるとみられるのが、気温の低下だ。気温と感染拡大はどのように相関しているのか。世界の都市の状況は。AERA 2020年11月30日号の「コロナ第3波」特集から、専門家による最新の知見を紹介する。
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第3波の背景として見過ごせないのが、気温の影響だ。
国立国際医療研究センター(東京)の氏家無限医師ら研究チームは、3月の各都道府県の累計患者数が、(1)県庁所在地の平均気温(2月)、(2)中国からの旅行者数(1月)、(3)各都道府県の高齢者の構成比率(2019年)──とどのように関係しているのかを検討し、オランダの出版社・エルゼビアが発行する医学誌に発表した。
責任著者で同センターの都築慎也医師(感染症疫学)はこう説明する。
「様々な要素が感染者数の増減に影響すると考えられる中で、解析に使った変数は限られています。ただ、この解析で同じ時期の都道府県の患者数をみてみると、人口構造やインバウンドなどを考慮してもなお、気温の低いところほど患者は多かったということが指摘できます」
海外はどうだろうか。
気候と湿度との関係については、同じエルゼビアが7月に発行した総合環境科学誌にこんなデータが紹介されていた。
世界保健機関(WHO)の情報を元に、北京大学の研究チームは今年3月27日時点の世界166カ国の感染例を分析したところ、気温が1度上昇すると、1日の新規感染者数は3.08%、新規の死亡者数は1.19%減ったという。
また、湿度が1%上がっても、1日の新規の症例者数は0.85%、死亡者数は0.51%減った。平均気温と湿度が低い地域で新型コロナの感染が起きやすいことを示している。
日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大教授は、気温との関係についてこう話す。
「事実として、4種類ある風邪のコロナウイルスについては、秋から冬にかけて感染が増えます。今回の新型も同様に秋冬に増加するかどうかは分からなかったのですが、最近のデータにはやはり、気温が低い方がウイルスが不活化しにくく長く生き延びて感染は広がるのではないかという報告もあります」