「最終的にOKをもらえたのはプレイベントの1週間前でした。とにかく、ホッとしましたね」(関澤さん)
会場も、映画館を改装した国際観光専門学校にかつての雰囲気を残した大ホールがあり、そこを借りられることになった。
プレイベントでは伊藤さんのほか、熱海出身の音楽家井上誠さんと脚本家の長谷川圭一さんが「熱海と怪獣」をテーマにトークショーを行い、200人近い来場があった。この成功で、映画祭の実現にめどがたったという。
一方、まだまだ大きな課題もあった。上映1作品の小さな映画祭とはいえ、上映料や会場使用料、印刷物の作成費用など多額の資金がかかる。そこで関澤さんらは6月、100万円を目標にクラウドファンディングを立ち上げた。
「当初は寄付額もなかなか伸びなくて。お金を出していただくことの難しさを痛感しました」(関澤さん)
それでも、熱海を思う人、怪獣映画が好きな人など156人から120万円以上が集まった。
「コレが、熱海を変える何かのきっかけになりますように。いつでも使える映画館が1館でも熱海にあるといいのですが……」(寄付者)
「ガッパ、キンゴジ、ギャンゴなどは昔から大好きな怪獣です!彼らが出現した地が怪獣の聖地になると思うと大変嬉しいです」(ほかの寄付者)
「クラウドファンディングの最終日は、最終期限の1時間くらい前からみんなでお店に集まって状況を見ていました。終盤に金額が一気に増えて、応援のメッセージも次々に届く様子を見て、涙が出ました。これだけ大きなことをやろうとしていたんだと実感できたのと、応援の声がただただうれしくて」(関澤さん)
10月27日(土)の開催まであと2日。当日に向けた最後の追い込みが続くが、実行委員らの顔は明るい。
当日、午前中の第一部は、熱海市民を無料招待する。熱海市にはいま映画館がなく、何年もスクリーンで映画を観ていない人は多い。
「映画を観るなら、レンタルもネット配信もあります。でも、大きなスクリーンを大人数で囲んで、興奮や感動を共有するのは映画館でしか味わえないもの。それを知ってほしいし、昔体験した人には思い出してほしいです」(伊藤さん)