世界のルールを無視するような行動で、各国から批判を受けている中国。専門家はその行動に驚きを隠せないようだ。

 5月上旬、世界の海洋関係者に大きな衝撃を与える事件が起きた。中国・山東海警に所属する「37102」という番号の船舶が、ベトナム海上警察の船舶に衝突し、その映像が公開された。中国側はベトナム側がぶつかってきたと主張しているが、映像を見る限り、そうは思えない。

 この船は全長63.5メートル。軍事転用も可能とされる最新鋭警備船だ。こうした「公船」と呼ばれる政府所属の船同士は、原則、物理的な接触を避けることが世界の「海のルール」。なぜなら「公船」同士の衝突は、外交交渉を飛び越えた「戦争」に近づきかねない行為だからだ。

「公船の衝突は、国境警備隊の撃ち合いに等しい。しかも中国の船は、銃座を上に向けていた。これは威嚇射撃の準備で、『次は実弾を発射するぞ』という意思表示に受け取られかねません」

 海上安保が専門の山田吉彦・東海大学教授は驚きを隠さない。

「これでは、長年海の仲間たちで積み上げてきたルールが、意味をなさなくなってしまう」

 相手を困惑させ、反発を招く常識外の行動は海だけにとどまらない。5月24日、中国の戦闘機が日本の哨戒機に距離50メートルとされる超接近行動を取った。日本の自衛隊関係者は語る。

「冷戦時代のソ連でもやらなかった。きわめて非常識な行動。向こうは対空ミサイルまで装備していたのだから寒気がした」

AERA 2014年6月9日号より抜粋