日本のポップカルチャー、エンターテインメントの祭典「ジャパンエキスポ」。これまでは漫画などの印象が強かった同イベントだが、パリの会場では今年、伝統文化の存在が目立った。

 ジャパンエキスポの常連、メリル(29)は「わたしの漫画時代は終わり。ここで、漫画以外の日本に出合うのが楽しみ」と話す。肥満気味で武道は無理かと思っていたけれど、2年前、弓をひく姿の美しさに魅せられて弓道を始めた。

 弓道への手引きをしたのは、会場に設置された弓道場の案内役、クレマンス(56)。彼女は2003年に漫画ファンの2人の娘の付き添いで初めて来場した。

「娘たちと見た映画『ファイナルファンタジー』にショックを受けた。日本の漫画の主人公は格好よくなくてもヒーロー。そして、教育的な要素が多い」

 会場には茶道や華道、習字などのブースも設置された。

「日本の伝統文化のコーナーが増えたのは、訪れる人たちの好奇心をかき立てている。武道は身体訓練の中に精神性を感じられ、すばらしい」(クレマンス)

 来場者の多くは15~25歳だが、会場で目立ったのは、家族連れや、30~40代だった。

「WABI SABI」コーナーでは、華道や茶道のデモンストレーション、伊賀忍者のパフォーマンスが披露された。展示会事務局のサラは「今年のジャパンエキスポのセールスポイントは、日本から多くの企業や工芸職人が参加したこと」と話す。

 今回、初めて出展した山口県の旭酒造のスタンドでは、自社商品をアニメ「エヴァンゲリオン」に登場するシーンを使ってアピール。用意した500個のグラスを何回も洗うほどの人気ぶりだった。ヨーロッパ担当の飯田薫(45)は「日本びいきのフランス人の多さにびっくりしました」。

 6月に開かれたパリ初の「日本酒テイスティングサロン」でも日本酒を楽しむフランス人が多数集まり、上質な日本酒がフランスで手に入るようになってきている。(文中敬称略)

AERA 2013年8月5日号