恐竜やマンモスが闊歩する日はやってくるのか... "絶滅動物の復活"がもたらすメリットとリスク 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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恐竜やマンモスが闊歩する日はやってくるのか... "絶滅動物の復活"がもたらすメリットとリスク

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『絶滅動物は甦らせるべきか?』ブリット・レイ,高取 芳彦 双葉社

『絶滅動物は甦らせるべきか?』ブリット・レイ,高取 芳彦 双葉社


 突然だが、映画『ジュラシック・パーク』をご覧になったことはあるだろうか。マイケル・クライトンの小説を巨匠スティーヴン・スピルバーグが映画化し、当時最先端のCGを駆使して恐竜たちを現代に甦らせた大ヒット作だ。作品を鑑賞したことがなくても、"制御されていたはずの恐竜たちが暴れ出して人間を襲う"というストーリーは、おそらく有名だろう。


 恐竜といえば、すでに"絶滅"した生き物。『ジュラシック・パーク』では科学技術を用いて恐竜を復活させているため、倫理観や暴走する科学へ警鐘を鳴らす側面もある。実は今回ご紹介するブリット・レイの著書『絶滅動物は甦らせるべきか?』も"絶滅動物復活に向けてのプロジェクト"の説明と、不安視される"環境破壊の恐れなどのリスク"についてまとめた一冊だ。


 本書では遺伝子救済の取り組みのうち、絶滅種に対するものを「ディ・エクスティンクション」と呼称。レイはさっそく序章の中で、絶滅動物の復活にまつわるリスクについて以下のように記している。


「ディ・エクスティンクションに対する不安の理由として、『ジュラシック・パーク』以上のものはあるだろうか。まず思い浮かぶのは、再生された動物が自然界に放たれたあと、侵略的外来種になる可能性があることだ。再生種と在来種のあいだに交雑が起こり、その個体群特有の遺伝的特徴が失われかねない」


 ディ・エクスティンクションの課題を掘り下げつつ、復元する種の選定や絶滅種の再生・復元に取り組む研究者たちの物語など幅広い内容が詰めこまれた本書。ちなみに第1章では「ディ・エクスティンクションの方法」について触れているのだが、面白いのは『ジュラシック・パーク』でのリアリティあふれる恐竜復活技術を否定的に解説している点だろう。


 映画では琥珀内に恐竜時代の吸血昆虫が閉じこめられており、その解析結果から恐竜が作り出されている。しかしレイいわく、最高の条件がそろったとしても古代DNAがパズルのピースのように安定していることはありえないそうだ。またレイは、ディ・エクスティンクションの候補種リストに恐竜が載っていないことも明記した。


 恐竜と同じように、"マンモスの復活"も人々の好奇心を刺激してやまない。本書では第4章でケナガマンモスの再生について言及しており、レイは再生によって得られる"利益"のうち現実的でわかりやすい例を挙げている。


「厳選したケナガマンモスの遺伝子を使ってゾウのゲノムを編集し、寒さに強いゾウをつくり、いま絶滅の危機に瀕しているゾウたちの生息範囲を広げようという発想だ。現在のゾウたちは温暖な地域にしか生息できないが、遺伝子編集によってマンモスの特性を与えれば、北方の広大な生態系に移れるようになるというわけだ」(本書より)


 一方でレイは、地球温暖化が進む環境面を考慮。ホッキョクグマですら棲息が困難になりつつある現状で、新たに作製した耐寒動物だけに"明るい未来"が待っているのかと疑問を呈している。そんなレイを驚かせたのが、ケナガマンモスを使えば北極圏の気温上昇を抑えられるかもしれないという仮説だった。


 レイが紹介したのは、ロシアの科学者セルゲイ・ジモフの考え。冬のあいだ餌を探し求めて草食動物が歩き回ることで雪の層に穴が開き、冷気が地面に届くようになるという。


「ジモフの言葉を借りれば、ケナガマンモスのような更新世の大型動物は歩く換気装置のような役割を果たしていたのである。マンモスたちが歩き回ることで空気が循環し、冷却効果が生まれていたということだ」(本書より)


 絶滅種を復活させたとして、一般的な感覚だと檻に入れて展示する未来を描きがち。一方で野生下に解き放つ動物に本来あるべき居場所を与えれば、環境にもたらす影響が大きいことは想像がつきやすい。現存しない種となればなおさらであり、レイもあくまで慎重な姿勢を見せている。


「マンモスとゾウの交配種を数百頭、数千頭の規模でツンドラに導入したときに、現在の生態系がどう反応するのかについては、特にしっかりした研究が必要だ。さらに、動物たちが生態系の保護や回復以外の目的に使われるのを防ぐため、実効性のある法規を整備することも求められる」(本書より)


 人間の都合で新たな生命を作り出すことについては、いつの時代も活発な議論と批判がつきまとう。これからさらに科学技術が向上していくなかで、私たちも常に正しい倫理観を持ち続けることが重要なのではないだろうか。


(記事提供:BOOK STAND)

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