『フランスの小さくて温かな暮らし 365日──大切なことに気づかせてくれる日々のヒント』トリコロル・パリ 自由国民社
『フランスの小さくて温かな暮らし 365日──大切なことに気づかせてくれる日々のヒント』トリコロル・パリ 自由国民社

 もうすぐ夏休み! でもコロナ禍で思うように外出できず、海外旅行なんてもってのほか。旅行好きの人は特に残念に思っているかもしれません。

 そこで今回は、ページを開けばすぐにでもフランスにいる気分になれる書籍『フランスの小さくて温かな暮らし 365日──大切なことに気づかせてくれる日々のヒント』を紹介します。現地に住む日本人の荻野雅代さんと桜井道子さんの2人組による「トリコロル・パリ」が、フランスでの365日の暮らしをコラム形式で記した一冊です。

 フランスの衣食住にまつわる話や、さまざまな習慣や文化について語られています。読んでいると自分もフランスに滞在しているかのような気がしてくるから不思議です。

 たとえば、フランス人がこよなく愛する「パン」について書かれた、5月11日のページにある「焼き立てバゲットは最高!」のコラム。

「夕方になると夕食用のバゲットを買い求める人々でパン屋さんには長い行列が出来ます。お店では朝、お昼前、夕方以降のピークに合わせてパンを焼くので、その頃なら必ず焼き立てのバゲットを買えます」(本文より)

 日本人のお米同様、いかにパンがフランス人の日常に根づいているかがうかがえます。そして「その香ばしい匂いに我慢できず、つい歩きながらちぎって食べてしまいます」という一文を読むと、焼き立てのやわらかなパンをかじりながらパリの一角を歩く自分の姿が思い浮かんできませんか?

 食については、ほかにも「四季折々の味を閉じ込めた手作りジャム」「フランスらしい夏の飲み物」「よりどりみどりのヨーグルト」「バターをかじる醍醐味」など興味深い話が盛りだくさん。

 ファッションや住まいに関することも日々の暮らしに欠かせません。「永遠の赤リップと赤ネイル」「ボーダーシャツの話」「フランス人は白い壁恐怖症!?」「蚤の市とアンティーク」などのコラムを読むとフランス人の美意識の高さがうかがえます。

 また、春にはエイプリルフールやお花見、夏には海水浴やバカンス、秋には白夜のイベントや冬時間、冬にはもちろんクリスマスや新年について、四季折々のコラムがあり、1年を通してフランスでの暮らしを堪能できます。

 もちろん最初から順に読まずとも、パラパラとめくって興味を惹かれたページを読むもよし、日めくりカレンダー的に今日と同じ日のページを開くもよし。1ページにつきひとつのコラムで、上半分が写真、下半分が文章というレイアウトなので読みやすいです。

 日常にあるささやかな幸せや季節を感じる行事、なにげない習慣など、フランスの日々のいとなみを身近に感じられる本書。日本にいながらフランスを旅するひとときを皆さんもぜひ味わってみてください。

[文・鷺ノ宮やよい]