『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』大野萌子 サンマーク出版
『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』大野萌子 サンマーク出版

 私たちの生活に欠かせない「言葉」。コミュニケーションを図るうえでたいへん便利なものですが、一歩間違えると、相手に誤解を与えてしまったり、人間関係にヒビが入ってしまったりすることもあります。

 とくに、仕事の場面における配慮のない物言いは、「パワハラ」として大きな問題へと発展する可能性も。2020年6月1日に通称「パワハラ防止法(労働施策総合推進法)」が施行されたこともあり、ビジネス現場のコミュニケーションには今後いっそうの配慮が求められていくに違いありません。

 そうした中、「ありとあらゆる場面で、言いたいことを伝えつつ、相手に信頼感や安心感を与えて、好意的に受け取ってくれるような言い方を、ひとつでも多く身につける必要があります」(本書より)と述べるのが、『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』の著者・大野萌子さん。本書は、「よけいなひと言」を「好かれるセリフ」に言いかえる141例をシーン別に解説した一冊です。

 相手に好印象を持たせるためにまず大切になるのが、「相手をネガティブな気持ちにする言葉は使わない」こと。第4章「気遣い」では、そうした事例がいくつも出てきます。わかりやすいのが、贈り物やお土産を渡す際の常套句である「つまらないものですが」という言い方です。人によっては「つまらないものならいらないよ」と受け取る人もいるでしょう。そこで代わりに使いたいのが「気持ちばかりですが」というひと言。「特別に卑下したり悪く言ったりする必要は、まったくない」「(謙遜や謙虚な気持ちも)度が過ぎるとかえって相手を不快にさせる」(本書より)と大野さんは記しています。

 また、皆さんの中には「断るのが苦手」という人も多いかもしれません。第3章「断り方」では、仕事の場面でも役立つ「上手な断り方」を学ぶことができます。大野さんは「まず覚えておいてほしいのは、『断る=拒絶』ではない、ということ」(本書より)とした上で、ただし、「関係性を維持したい場合は、必ず『代案』を提案しましょう」(本書より)と説いています。

 たとえば、自分のできないことを求められた場合、「それはできません」「やりません」と一方的に断ってしまうのは相手としてはいい気持ちがしないもの。こういう場合は「別のやり方でもいいでしょうか?」と代案を出したり、「わからないので教えてください」とアドバイスを求めてみたりするのがよいそうです。

 このほか、「挨拶・社交辞令」「お願いごと・頼みごと」「自己主張」「注意・叱り方」「謝罪の仕方」「SNS・メール」「子育て」など全部で15章から成る本書。どの事例も「よけいなひと言」と「好かれるひと言」が対比して提示されているので、ひと目で頭に入りやすく、そのあとの解説も簡潔でわかりやすいです。皆さんがふだん、「こういうときはなんと言えば好印象なんだろう?」と悩みがちなシーンに対する答えが、きっとこの中に出てくることと思います。

 「プラスの表現は、人間関係の良いスパイラルを生み出します」とは本書に書かれている言葉。皆さんも好印象を与える言い方をマスターして、より良い人間関係を築くきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

[文・鷺ノ宮やよい]