『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか? 偏差値37のバカが見つけた必勝法』村山 太一 飛鳥新社
『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか? 偏差値37のバカが見つけた必勝法』村山 太一 飛鳥新社

 飲食店を長く続けるというのは一筋縄ではいかないもの。さらには、昨今の新型コロナウイルスの影響により、大打撃を受けているお店も多いことでしょう。しかし、このコロナ渦でも黒字を達成し、「飲食業界の奇跡」とまで評されたのが、東京都目黒区にあるイタリアン「Restaurant L'asse(レストラン ラッセ)」。そのオーナーシェフである村山太一氏による初めてのビジネス書が『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか? 偏差値37のバカが見つけた必勝法』です。

 タイトルにある「星付き」というのは、ミシュランの評価を表す星マークのこと。村山氏は2011年に「ラッセ」をオープンし、半年でミシュランの一つ星を獲得したという凄腕なのです。そんな人物が「サイゼリヤでバイト」をするというのですから、いったいどういうことなのだと興味を惹かれ、本書を手に取る方も多いでしょう。

 村山氏は生き残るための原則として、以下の二つの必勝法を公開しています。

・サバンナ理論......強烈な危機感で即行動する

・マヨネーズ理論......超一流を丸パクリする

 店の経営が行き詰まってしまったときに、マヨネーズ理論を実践するべく村山氏が取った行動が「生産性と仕組み化が最高峰のサイゼリヤでバイトをする」だったのです。

 村山氏のバイト先となったのは、サイゼリヤ 五反田西口店。ここでは初日から驚きの連続を体験することになります。たった数十分の説明とOJT(従業員の職業教育)でだいたいの業務がおこなえるシンプルさ、料理未経験でもキッチンに立てる合理的なシステム、そして何より「上下関係がほぼないところ」に一番衝撃を受けたそうです。まさに「スタッフにも幸せな人生を送ってもらいたいと思っていた、かつての僕の理想郷がサイゼリヤにはありました」(本書より)と村山氏は記します。

 さて、いくらミシュラン一つ星のシェフでも、サイゼリヤでは一番下っ端の立場である村山氏。高校生の上司のもとでバイトをしながら、サイゼリヤからさまざまなことを吸収し、自身の店に取り入れていきました。すると、小さな改善の積み重ねにより、スタッフの数を以前より減らしたにもかかわらず、利益は過去最高を更新。劇的に経営を改善でき、スタッフの給料も1.5倍に上げることができたといいます。

 「優れた仕組みを持つ企業でバイトすれば、本業の改善ポイントがどんどん浮かんでくるはずです。バイトするだけで、生産性向上のネタは間違いなく見つかります」(本書より)と村山氏はいいます。業種は違えども、自身の成長に頭打ちを感じている方は、こんな型破りな方法を試してみるのも一つの手かもしれません。

 ほかにも本書には、「落とし穴に落ちないで最短で成長する」ための方法論が満載です。まずはマヨネーズ理論の第一歩として、本書を読んで丸パクリできる部分を取り入れてみるというのはいかがでしょうか。

(文・鷺ノ宮やよい)