心温まるエッセイが詰まった『泥酔懺悔』はおいしいお酒を飲んだ時のよう------アノヒトの読書遍歴:山中千尋さん(後編) 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

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心温まるエッセイが詰まった『泥酔懺悔』はおいしいお酒を飲んだ時のよう------アノヒトの読書遍歴:山中千尋さん(後編)

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グローバルに活躍しているジャズ・ピアニストの山中千尋さん。世界を舞台に活躍を続ける一方で、時間があれば本屋を巡り、月に50冊ほどの蔵書を購入されるといいます。そんな山中さんに、前回に引き続き日頃の読書生活について伺いました。


------前回はアメリカ社会に関する本を紹介していただきましたが、やはり海外の書籍の方が心に残る本は多いですか?

「そうですね、オースティン・クレオンの『クリエイティブの授業』も私にインパクトを与えてくれた一冊です。原題は「STEAL LIKE AN ARTIST」。アーティストのように盗め、という意味なのですが......。アーティストでなくても、普通に生活している中でこんな工夫をすると、いろいろなことに役に立つよ! そして自分が元気になるよ! という秘密がいっぱい入った本なんです」


------いろいろなことに役に立つ、といいますと?

「例えばSNSをするにしても、現代社会って、『リア充』とかそういう言葉が出てきてしまったように、現実問題の格差が出てくると思うんです。でもそんな格差を逆に面白がって、『無名からやってみよう』とか、『"自分"を知ってもらうにはどうしたらいいか』というそんな具体的なアプローチ方法も描かれています。私は、SNSで自分を発信していく、という意味では、誰もがアーティストなんだと思っていて。そういった中で生き抜いていく=アーティストとして生きている、という共通点でこの本を読むと、まさに目から鱗の種明かしを知ることができると思います。『友達を作って敵を無視する』とか...実際にインターネットをサバイバルしていくコツも載っています。そういうのも面白いんですが、『喧嘩をしている暇があるなら何かを作りなさい』と言う風に本は結んでてですね、実際に、『じゃあ自分でいろいろなことをやってみよう!』っていう風に元気にしてくれる本かなと思います」


------どんな方にお薦めですか?

「今の世の中に、なくてはならない『インターネットに関わる人』にはもちろん、逆に『インターネットに関わらないアンプラグでやる』という方にもお薦めしたいです。自分を表現するということにおいては、普段している生活がすべて表現なので、この本を読むことで、こんな風に物事をとらえていくと面白い、また楽しめるんじゃないか、という生活のコツを掴めるのではないかと。いろんなアーティストも引用されていて、たとえば音楽家のブライアン・イーノの『私が作曲をしてきたのは、自分自身が聴きたい未知の音楽を作るためだ』とか。本当に自分の聴きたいものを作る、自分のやりたいことを表現する、自分の話したこと、そして読みたいものを書くという、そういうのが表現するっていうことの基礎なんだとこの本では言っています」


------ちなみにですが、日本の作品だといかがですか?

「エッセイなんですが、すごく大好きな本があります! ちくま文庫から出ている『泥酔懺悔』。この一冊を読んだだけで、おいしいお酒を飲んだような、そんな気分になれる本です。多くの女性作家が書かれたアンソロジーで、西加奈子さん、三浦しをんさん、角田光代さんなど人気のある作家の方が書かれています。とにかくどのエッセイも本当に面白い」


------印象に残っているエッセイはありますか?

「瀧波ユカリさんのお話です。私、瀧波ユカリさんはコミックスも大好きで、たくさん読んでるんですけど、本当に江古田ちゃんは実在していたんだなという気持ちに(笑)。江古田ちゃんというのは、彼女のコミック『臨死!!江古田ちゃん』の主人公。瀧波さんが学生の時の、新歓コンパあるあるのお話がとっても面白くて。どちかというと"楽しい""イケてる""派手"なコンパではなくて、"イケてない"部類のコンパで。その地味さ加減とか、所在なさとか......。その後ここではちょっと言えないような展開になっていくんですけど(笑)、それは是非、本を読んで楽しんでいただきたいなと思います。でもやっぱり好きな人、友達、家族、そしていろんな人とお酒を飲むというのは、ただそれだけで世界を平和に幸せにしてくれるような、そんな感じがして心が温まる一冊ですよ」


------山中千尋さん、ありがとうございました!


<プロフィール>

山中千尋 やまなかちひろ/群馬県出身のジャズ・ピアニスト。バークリー音楽大学を首席で卒業後、2001年にジャズ・ピアノの名門レーベル「澤野公房」からデビュー。その後渡米し、ニューヨークを拠点に世界各地で活動を続け、2011年には米「デッカ・レーベル」初の日本人ジャズ・アーティストとして、全米デビューを果たす。2015年からは自身の卒業校でもある桐朋学園大学の音楽部作曲科や、バークリー音楽大学で教鞭を揮っている。今年6月に、最新アルバム『ユートピア』をリリース。


(記事提供:BOOK STAND)

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