働く女性をさす言葉として一般的であった「OL(オフィス・レディ)」。けれど今の時代、自分自身がそのイメージに当てはまらないと感じる女性も多いようです。なぜならOLという言葉には、結婚して退社するまでの「腰掛け」的に仕事をしているというイメージが強く、今では結婚をしても女性が働くことは当たり前のことになってきたから。

 いっぽうで、働く女性を表すのに「キャリアウーマン」という言葉もあります。こちらは男性と同じような評価を得るべく肩肘張って男性並みに、もしくは男性以上にバリバリ働かなければならなかった時代に生まれた言葉。エフォートレス(がんばりすぎない)な空気感の現代にはこの言葉もちょっとそぐわないような気がします。

 そこで、多様化した現代女性たちの姿をあますところなく捉えた表現としてつくられたのが「キャリジョ」という造語です。名づけたのは「博報堂キャリジョ研」。広告会社の博報堂DYメディアパートナーズの女性マーケティングプランナー、プロモーションプランナー、メディアプロデューサーによって2013年に立ち上げられた社内プロジェクトで、有識者ヒアリングや女子会形式の定性調査、インターネットによる定量調査などを通じて徹底的にキャリジョの研究がおこなわれているといいます。

 ......こう紹介するとなんだか難しく感じますが、「イマドキの働く女性ってこんな感じなんですよ」ということを少しでも伝えるべく、これまでの知見を一冊にまとめたのが本書『働く女の腹の底働く女の腹の底』というわけです。

 ではキャリジョの特徴とはどういうものか? その定義としては、「有職(パート・アルバイトは除く)」「子どもがいない(未既婚は問わず)」「年収が200万円以上」などが本書ではあげられており、年齢でいうと20歳~34歳あたりが対象となるようです。

 とはいえ、当然ですがこの定義に当てはまる女性は今の世の中ゴマンといるもの。というわけで、彼女たちの仕事や恋愛・結婚観、SNSの使い方などについてさまざまな角度から分析し、その生態が明らかにされています。データ量がとにかく豊富で分析力がすぐれているのはさすが博報堂といったところです。

 興味深いのは第3章でキャリジョクラスターが作られているところ。クラスターとは「集団」という意味で、最近ではある種のネットスラングにもなっていますが、キャリジョ内でも彼女たちを「モーキャリ」「ちょいキャリ」「割りキャリ」「プロキャリ」「乗っキャリ」「凡キャリ」「キラキャリ」といった7つのクラスターに分類できるというわけです。自分がどのクラスタなのか、あるいは女友達や職場の女性はどのタイプなのか......チェックしてみるのも面白そうです。

 さらに最終章の4章では、「現代の女性が働く・生きるということ」というテーマのもと、コラムニストの犬山紙子さんへのインタビューを収録。今まさにタイムリーともいえるセクハラ問題に始まり、「女性らしさ」や「女子力」といった言葉によるカテゴライズ、憧れの女性像の変化についてなどが語られ、気ぜわしい現代社会で女性が生きやすく過ごすためのヒントが満載の内容となっています。

 本書を読んで感じるのは、サブタイトルにもあるとおり「女性の生き方や考え方は本当に多様化している」ということ。だからこそ、自分の目指す理想像について見失ってしまう女性もいるかもしれないし、今を生きる彼女たちとどんなふうに付き合っていくべきか迷う人たちもいるでしょう。そんな皆さんにとって、本書は何らかの気づきを得られる一冊となっていることと思います。興味本位や暇つぶしで楽しむもよし、自身の指南書として読むもよし、気になった方は一読してみてはいかがでしょうか?