人間、生きていればいろいろあります。出口が見えなくなったり、心身ともに疲れ果ててしまったり、ただ誰かのぬくもりが欲しくなったり......。

 そんなとき、皆さんなら、特に女性の方ならどうしますか? 「心と体の栄養補給をしたくなったとき、レズ風俗というすてきな選択があります」と、まるで思いもよらない方向からその解決策を投げかけてくれるのが、本書『すべての女性にはレズ風俗が必要なのかもしれない。』です。......いや、本当にその考えはこれまで思いつかなかった!

 著者は御坊さん。大阪生まれ、大阪育ちの男性で、大学卒業後、27歳のときに大阪ミナミに女性専用レズビアン風俗店「レズっ娘クラブ」を起ち上げたそう。本書は今年で10周年となる同店のさまざまな内情やこれまでの紆余曲折を描いた一冊となっています。

 男性向け風俗であれば巷に山ほど存在するし、そのレポートもいくらでも読むことができます。けれど、女性向け風俗は? それもレズビアン専門となれば全国にも数店しかないそうで、私たちにとっては未知の世界。

 女性たちは何を求めてレズ風俗を利用するの? 年をとっている、体型がふくよかなどの女性も利用できるの? どんなキャストが在籍しているの? そうした誰もが興味を抱く疑問に著者は本書で丁寧に説明してくれます。

 くわしくは読んでいただくのがいちばんですが、タイトルにもなっている"すべての女性にはレズ風俗が必要なのかもしれない理由"。それについて著者は「"気持ちいい"が性的快感に由来するものなのか、その他の心地よさに由来するものなのかの違いはありますが、リフレッシュして翌日からまた仕事に生活にがんばろうと思えた、女性としての自分を思い出せた、好きな人ができて世界が明るく見えるようになった......。(略)またレズ風俗を知らない女性も、こんなふうに人生をちょっとよい方向に変えるきっかけを見つけてもらえる可能性はとても高い。だから僕は、すべての女性にレズ風俗が必要なんじゃないかなぁと思うのです」と書いています。

 そして本書は、そんな女性向け性風俗業を一心に盛り立ててきた経営者の奮闘記でもあります。スタート時、電話が鳴りやまなかったというキャスト募集への問合せ、そのわりにオープン後は苦戦が続いた集客、キャストとお客様の恋愛沙汰、イベント開催時の事件、キャストには内緒で著者が続けた貧乏生活などなど、エピソードは尽きることがありません。店舗経営の裏側をのぞいている気分になれるのも、本書の面白さのひとつではないでしょうか。

 "風俗"という言葉にはネガティブなイメージを持つ人も多いことと思います。けれど、女性が気分転換したいときに、エステやネイルやスパに行くのと同じ感覚でレズ風俗店を利用する。そしてそれを友達同士で気兼ねなく話し合う。自立した女性がこの先ますます増えていく中で、今後はもしかしたらそんな未来がやってくることもあるのかも......!? 本書はそんな期待すら抱かせてくれる、他にはない稀有な一冊となっています。