一般的には「正解がない」とされる子育て。各家庭によって考え方や方針は実にさまざまで、何が正解か自信を持って言える人のほうが少ないことと思います。

 しかし、「子育てには明確な正解がある」という主張のもとに書かれたのが、今回ご紹介する『世界標準の子育て』。著者は日米で20年以上教育現場に携わり、これまで4000人以上のアジア人の育成をしてきたという船津徹さん。これまでの経験をふまえ、世界各国で行われている子育ての理論と実践を体系化したものがこの一冊にまとめられています。

 では、そもそもどのような子育てが「正解」なのでしょうか。本書で何より大切とされているのは「地頭の良さ、あきらめない心、社交性といった要素を育て、どんな環境の変化にも負けない子どもを育てる」こと。なぜなら、この「自信」「考える力」「コミュニケーション力」という三つは、世界標準の子育ての根幹となるものだからだそう。今後ますますグローバル化が進む中で、そうした環境に順応できる子どもを育てることは何より大事なこととなってくるにちがいありません。

 全部で7章構成となっている本書。第1~3章までは「知識編」として、世界と日本の子育て事例を見ながら、日本人が大きく間違えている子育て習慣を考察しています。

 中でも興味深いのは、第2章に出てくる海外の子育て事例。たとえば、北欧は世界一教育水準が高い地域として知られていますが、そのいちばんの要因は「父親の育児参加」にあるといいます。父親が子育てに参加することで母親の育児負担やストレスが減り、結果として子育てしやすくなるのだとか。

 また、「褒める子育て」についても日米ではこんな違いが。日本人は「協調性のある子に育てる」「行儀のいい子に育てる」といったしつけの意味合いで子どもを褒めるケースが多いけれど、アメリカでは自分ひとりでできたことに対する「自立への賞賛」の気持ちが主となっているそう。自分の意思で挑戦したことに対して褒めてあげると、子どもの自信や自立心が育ちやすいのだとか。ほかにも韓国や中国、インドなどの国々の教育事情が日本と比べながら説明されています。

 続く第4~7章は「実践編」。0歳〜18歳までのそれぞれのステージで親がしてあげるべきことが具体的に紹介されています。0歳児から6歳児までの年齢別のお手伝い例や絵本の読み聞かせのタイミング、7歳~12歳までの間にやるべき習い事や読書習慣を身につけ方、13歳~18歳のディベート力、コミュニケーション力の身につけ方など。日常の中で親が子どもに実践できることが詳しく書かれていて、たいへん参考になります。

 また、巻末特典のQ&Aも圧巻のボリュームで読み応えアリ。「男の子と女の子で接し方は変えるべき?」「子どもを育てるなら田舎? 都会? 郊外?」「小学校受験はさせるべき?」「子どもが食事中も携帯電話を離しません」など親なら誰しもがぶつかるような質問にピンポイントで回答が提示されています。

 この一冊を通して読めば、世界各国でおこなわれている子育ての実情と、世界標準の子どもに育てるには親が何をすべきかが明確にわかるはず。この先のグローバル化、多様化な社会を見据え、子を持つ親として読んで損はない一冊といえそうです。