早く帰りたいのに残業を頼まれた。友達に「お金を貸してほしい」と言われた。好きでない異性から「付き合ってほしい」と告白された。



 私たちが人と関わり合いを持って生きていくうえで、かならずしも生じるであろう「断り」の場面。皆さんの中にも「断るのが苦手で......」という性格の人や「あのときもっときっぱりと断っていれば......」なんて後悔をしている人は多いのではないでしょうか。



 そんな皆さんにぜひ一読いただきたいのが本書『できる大人は、男も女も断わり上手』。銀座の一流ママが"カドの立たない"お断りの作法をそっと教えてくれるとなれば、中をのぞいてみたくなるというものです。



 著者の伊藤由美さんは、銀座「クラブ由美」のオーナーママ。18歳で単身上京し、19歳で「くらぶ宮田」のナンバーワンに。22歳でクラブ「修」の雇われママとなり、弱冠23歳でオーナーママとして「クラブ由美」を開店したという"接客のカリスマ"。銀座の超一流クラブとうたわれる「クラブ由美」は、客筋も政治家や財界人など名だたるVIPばかりだといいます。



 そんな伊藤さんであれど、そしてそんな伊藤さんだからこそ、これまで仕事でもプライベートでも、断る必要が生じる機会は何度もあったことでしょう。その際、相手への気遣いを忘れずにどのようにうまく「NO」を言うか? この一冊にはそうしたノウハウやテクニックが詰まっています。



 全部で5章からなる本書。第1章ではまず、「断ることを恐れない」というテーマを掲げています。頼まれごとをしてついつい引き受けてしまうことの弊害などを通し、「断ることは悪いことではない」と伝えます。



 続く2章では「カドの立たない断り方」を7つの作法とともに紹介。その一つをあげるとすると、「断りっぱなしではなく『代案』でフォロー」というもの。ただ単に「できない」と断るのではなく「〇〇はできないのですが、その代わりに――」と提案をするというものです。



 たとえば「クラブ由美」に来るお客さんで、カラオケが苦手だという男性。彼はマイクを向けられると「ボクは音痴だから歌うのは勘弁。その代わり、他人の歌は盛り上げるよ~。ママ、マラカスある?」と答えるそう。やんわりと断りながら、自身は仲間の歌の盛り上げ役に回るわけです。「いや無理。歌えない」だけなら場が白けてしまいますが、こんな提案をしてくれるなら、その場にいる誰もが気持ちよく、楽しく過ごせそうですよね。



 そして、第3章ではビジネスシーンの「お断り」、第4章ではプライベートのお断り、第5章では恋愛におけるお断りと、私たちの日常生活でも使えそうなお断りの手法を具体的に、実践的に教えてくれます。



 ビジネスシーンであれば、手一杯なところに新たな仕事を頼まれた、行きたくない飲み会に誘われた、職場の人からLINEを交換しようと言われた。プライベートであれば、お金を貸してと言われた、宗教やマルチ商法に勧誘された、近所や親戚からの困った頼みごと。恋愛であれば、好きでない人からの告白など。どれも「あるある!」と思い当たるようなリアルな事案ばかりですが、皆さんならどのようにうまく断りますか?



 これについては第2章までの手法を使って、ぜひご自身で考えてみてください。そして、伊藤さんが教える断り方についても詳しく書かれていますので、答え合わせのつもりで読んでみてください。



 「長年、政財界で活躍するお客様と接してきて感じるのは、できる人は男女ともに、断り方がお上手だということです」と語る伊藤さん。皆さんも本書で上手な断り方を学んで、ワンランク上の大人を目指してはいかがでしょうか。