小中学生から寄せられた科学に対する疑問や興味にこたえる『夏休み子ども科学電話相談』。1984年から毎年、夏休みの学休期間に放送されているNHKの名物ラジオ番組です。



 見どころはなんといっても、常識にしばられない子どもたちからの多様な質問と、それに対する専門家の先生方の回答。この本はそうしたお話の数々を2016年の番組内容から抜粋し、一冊にまとめたものです。



 全4章からなる本書。第1章「身近にある科学に納得」では「雨の日に、土のにおいを強く感じるのはなぜ?」「冷たいものを食べると なぜ頭がキーンとするの?」など、第2章「すごい生物と驚きの生きざま」では「ホタルはなぜ光るのですか? また、その光はなぜ緑色なの?」「なぜフクロウは真後ろを向けるのですか?」など、第3章「空を見上げて浮かぶ疑問」では「空は、どの高さから空なのですか?」「地球で最初の生物は、どうやって生まれたの?」など、第4章「大人もたじろく難問奇問」では「どうして男の子にもおっぱいがあるのですか?」「好きなのに嫌いと言ってしまうのはどうして?」などのお話が掲載されています。



 こうした質問を見ていて感じるのは、子どもたちの発想力や想像力の柔軟さ。自然界に存在するさまざまな現象に目を留め、不思議を見つけ出す姿には思わず感心してしまいます。それに対して、私たち大人といったら! 「空はどの高さから空なの?」と子どもに聞かれても、どう答えてよいかうろたえてしまう人も多いのではないでしょうか。......そんなこと、ふだん空を見ても考えたことなかった!



 そこで頼りになるのが回答者の先生方! 大学教授、動物園や水族館などの館長、プラネタリウムの解説員などその道の専門家による解説には、「そうだったのか!」と深く驚いたり納得したり。そしてときには、意外な面白さに吹き出してしまったりも。ラジオのやりとり同様に対話形式で質問と回答がおさめられているので、番組の雰囲気をそのまま本でも感じ取ることができます。



 高度な専門知識を有する大人がその分野の話をいかにわかりやすく小中学生に説明するかという点も興味深いですが、中には科学を超えて人生につながるような話もあり、大人の私たちがはっとさせられることもあります。「科学」とはけっして難解なものではなく、実際は私たちの生活を取り囲むすべてに通じる身近な問題なのだと改めて気づかされるかもしれません。



 最近ではインターネット、とくにSNSで話題となり盛り上がりを見せることも多い『夏休み子ども科学電話相談』。本書を読めば、この番組が30年以上にわたって幅広い年代の人たちから人気を集めてきたのがなぜか、その秘密がわかることでしょう。そして、まだ番組を視聴したことがないという人は、実際にラジオで聴いてみたいときっと思うはずです。