日本では、女性の下着市場は6400億円であるのに対し、男性の下着市場は2700億円とのこと。女性にはパンツだけでなくブラジャーがあるため、自然と市場が大きくなるのでしょうが、それにしてもかなり差が開いています。



 「つまり男性は『3枚セット990円』のパンツで十分という考え方の人が多いのではないでしょうか? この考えは『自分は組織の中のちっぽけな歯車だ』という意識につながっていると思います」と持論を展開する人がいます。



 なぜパンツの話が、働き方や自己肯定感の話に? と少々戸惑う人もいるかもしれませんが、それが『人生をはみ出す技術』の著者、枡野恵也氏。東大卒業後、コンサルティング会社・マッキンゼー&カンパニーに入社。転職を経て、現在はパンツブランド「TOOT」の社長になった人物です。



 1枚3000円~5000円の男性下着を作る同社は、国内のみならず、アジアを中心に海外でも人気のあるブランドで、知る人ぞ知る存在。"男性高級下着"という今までになかったジャンルで注目のブランドなのです。



 氏は自著の中で、組織の歯車をやめ「はみ出す」ことをすすめます。必ずしもそれは起業や転職を指すのではなく、「ほかの人と違う選択をすること」。会社にとどまったままでもできるといいます。社会変革が求められている今の日本で、「レールから外れない」ことはもはやリスク。既成概念にとらわれず、"はみ出し"て選択肢を増やすことが、自分にフィットするキャリアを積む第一歩になると説くのです。



 氏の経歴を見ただけでは、大胆にチャレンジする人物と感じるかもしれませんが、臆病を自認する社長。自身のキャリアも「ミドルリスク・ミドルリターン」で堅実にはみ出したからこそ形成できたのだそうです。



 「男の沽券にかかわる」ではなく「男の股間にかかわる」とばかりに、高級下着を買う男性が増えたら、自信にあふれる男たちが世の中に増え、結果的に女性もハッピーになるかも。氏の目指す「パンツで世界平和」もあながち、間違っていないように思えてきます。ちなみに同社のパンツは立体縫製でベスポジをキープできるのが最大の特徴とのこと。"はみ出さないパンツではみ出す人生を"など全編にシャレの効いたフレーズが見られるのも本書の魅力です。