11月22日は「いい夫婦の日」。1985年に政府が経済対策閣僚会議で、11月を「ゆとりの創造月間」として提唱したのが始まりだそうで、今年で11年目を迎えます。工夫を凝らしたイベントやキャンペーンが開催され、新婚夫婦も長年連れ添った夫婦にとっても互いの絆を確かめあういい機会だといえます。



 しかし近年、結婚の形は変わってきています。婚姻関係にある2人が、必ずしも「夫婦」であるとは限りません。元大阪・神戸アメリカ総領事館 総領事のパトリック・ジョセフ・リネハン氏と元ブラジル空軍 航空管制官エマーソン・カネグスケ氏は、同性婚が合法化しているカナダで結婚した正真正銘の「夫夫(ふうふ)」。カネグスケ氏は、日本の外務省が初めて同性婚パートナーに「配偶者ビザ」を発給した第1号でもあります。米国人のリネハン氏とブラジル人のカネグスケ氏の半生、東京での出会い、夫夫での活動、互いへの想いを綴った1冊がこの『夫夫円満』です。



 本書は米国やブラジルにおけるLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)の内実を知る入門編であることはもちろん、1組の夫夫の愛と信頼の物語でもあります。



 面白いのは、前半はリネハン氏、後半はカネグスケ氏の視点で書かれている点です。リネハン氏がカネグスケ氏と出会った瞬間「生涯の伴侶となるべき人を見つけた」と確信し、運命を感じたのに対して、当のカネグスケ氏が思っていたことは......。



 一緒に暮らし始めてからも、朝型のリネハン氏と夜型のカネグスケ氏のライフスタイルは真逆。しかし無理に合わせることはせず、その代わりに毎日、ポストイットを使った愛のメッセージ交換を欠かさなかったそうです。リネハン氏は朝一番に自ら入れたコーヒーとともにベッドサイドへ、カネグスケ氏は夜の内にリネハン氏が朝、目に止めるであろう場所に日替わりで貼っておきます。日ごろのコミュニケーション不足を感じている"ふうふ"には、すぐにでも真似できそうなアイディアです。ただし、メッセージの内容は日本人から見ると、空の彼方まで歯が浮いてしまいそうな熱烈な愛の言葉が躍っているのですが。



 さらに米国とブラジルの国際結婚でもある2人は、ライフスタイルだけでなく慣習も異なります。初めてのハワイ旅行も幸先の良いスタートではありませんでした。それでも、互いの気持ちを尊重することで問題を乗り越えていきます。



 別々の人生を歩んできた全く異なる二人の人間が共に生きていく上で大切にしなければならないことは何か。夫婦であろうと夫夫であろうと、違いはありません。



 ある歌の一節を墓碑銘に刻みたいのだとリネハン氏は本書で言っています。



 「この人生において、私はあなたに愛された」



 胸をはってそう言えるおふたりのような「いい"ふうふ"」になりたいものですね。