ことあるごとに比べられる東の関東と西の関西。実際、食べものから、エスカレーターの左右どちらに立つのかといった事柄まで、東西によって根付いている文化は異なります。



 本書『くらべる東西』では、そうした東西の文化や風俗の違いの中から、34の違いに注目。豊富な写真とともに紹介していきます。



 どんな違いがあるのか、いくつか見ていきましょう。



 まずは、"いなり寿司"。関東では俵型なのに対し、関西では三角形と、東西でその形が異なるのだといいます。



 関東のいなり寿司は、五穀を司る稲荷神社に奉納する米俵の形にちなんでいるため俵型をしていますが、関西ではキツネの耳の形や伏見稲荷大社のある稲荷山の形を模しているために、その形は三角形なのだそう。



 ちなみに、中のご飯も、関東は白い酢飯が多いのに対して、関西では具が入っているケースが多いのだとか。



 続いて、桜。桜餅も関東と関西ではスタイルが異なります。



 関東のものは、小麦粉で作った生地を薄く伸ばし、クレープ状にして餡を包み、桜の葉でくるんでいるのに対し、関西のものは「道明寺粉」という大阪の道明寺で保存食として使われた粉を蒸し、これをまんじゅうの形にして餡を包み、桜の葉でくるんでいます。関西の桜餅が別名"道明寺"と呼ばれるのは、この道明寺粉を使っていることに由来するのだそうです。



 そして東西の違いは、銭湯にも。関東と関西とでは、銭湯の湯船の位置も異なるそう。それぞれ湯船が、関東の銭湯では浴場の奥に、関西では浴場の中央にあるのだといいます。



「肉体労働者が多かった関東では、体についた汗や泥を洗い流してから湯船につかるので奥に、一方、商人が多かった関西では、体を温めてから体を洗うので湯船を中央に据えたという説が有力のように思われる」(本書より)



 ちなみに、銭湯で用いる風呂桶の大きさにも違いが。関西では湯船で体を温めてから体を洗うため、風呂桶を使って湯船の湯を汲んで体にかける"かかり湯"をしますが、その際、大きな桶だと重くて使いにくいことから、関東に比べ桶の大きさが小さいのだそうです。



 湯船を中央に据えるためには配管の構造も複雑になるため、関西でも中央に湯船のある銭湯は年々減りつつあるそうですが、それぞれの銭湯を訪れた際には注目してみてはいかがでしょうか。



 東西におけるさまざまな文化の違い。本書で紹介される34の違いのなかにも、新たな発見が多々あるかもしれません。