激しい痒みと炎症に襲われる、アトピー性皮膚炎。厚生労働省は、2014年の時点で、日本全国に45万6000人の患者が存在すると推計しています。



 今回ご紹介する漫画家・青山ぱふこさんも、アトピー患者のひとり。生まれつき重度のアトピー体質で、自身の闘病体験を綴った漫画を、通っていた専門学校の卒業制作としたそうです。さらに、それを自費出版したところ、子どもからお年寄りまで多くのアトピー患者から反響があったといい、今年1月には同作を『アトピーが教えてくれたこと』と改題・加筆修正した上で商業出版されました。



 本書を読んでいると、「なんで私が」「いつになったら治るの」といったネガティブな単語が繰り返されます。作品全体の雰囲気は明るく、また非常にかわいらしい絵でまとめられているのですが、やはり肌がボロボロになってしまうという病気の性質上、他人の目を気にしてどうしても暗い気持ちになってしまうようです。



 一方で、「周囲の理解(があった)」という言葉も、同じく本書の中で繰り返されます。



 たとえば、mixiでアトピー患者のコミュニティを見つけ、同じ悩みを持つ人々と辛さを共有できたとぱふこさんは振り返っていますし、また脱ステロイド(ステロイドはアトピー治療の薬だが、副作用や依存を気にして避ける患者が多い)に取り組んでいた高校時代の友人たちは、言葉をかけてくれたりお守りをくれたりと、さまざまな方法で励ましてくれたそうです。



 ただ、アトピー治療が原因で、家族とぶつかってしまうことも......。



 当然のことながら、ぱふこさんの両親は彼女のアトピー治療を応援してくれていました。しかし、家事をしてくれるお母さんに「畳の上に(ダニなどがいるから)服を置かないで!」「なんで冷凍食品をお弁当に入れるの!?(冷凍食品は添加物があるため、アトピー治療に良くない)」などと、過度のストレスから八つ当たりしてしまうことは日常茶飯事。





 結局、ぱふこさんの場合は両親と大喧嘩した夜に、お互いの思いの丈を話し合い、ぱふこさんはできる限りのことは自分でするように。両親も脱ステロイド・脱軟膏治療に理解を示してくれるようになり、その後は何度かのリバウンド(再発)はあったものの、現在は半袖でも気にせずにいられるほど、軽い症状となったそうです。



 冒頭で述べたとおり、数多くの患者が存在するのがアトピー性皮膚炎です。アトピーに悩んでいる人、身近に患者がいるという人には、リアリティをもって受け止められる一冊といえるでしょう。