------音楽関連の本の方が影響を受けやすい感じでしょうか。

「音楽以外からも影響を受けることはあります。たとえば、東村アキコさんの漫画『かくかくしかじか』。この本は、東村さんの美術の予備校時代の恩師である先生が亡くなってしまったことをきっかけに、ペンを握ってそのことを描いたお話。この本を読んでいても思いますが、やはり東村アキコさんはエネルギッシュだし、いろんなものを鮮やかに切り取るというか、ポジティブな方なんだと思います、すごく。なのですごく楽しく読めるんですよ。でも楽しく読めるけど、ぐさぐさとくる表現もたくさんあって。東村さんは美術予備校から美大に行くんですけど、美大に行ってからさぼりまくるんですよね。それでさぼりまくりつつ、『美大に行ったからってなにもならないよ』みたいなことをぐさぐさぐさぐさと表現しているんですよね。『斬る』というか......」



------特に影響を受けたシーンなどあればご紹介ください。

「実は私も予備校行ってから美大に進んでいて。しかも、この本の中に登場する予備校の先生がですね、自分の予備校時代の先生にすごく似ているんですよ。スパルタでとにかく描かせるっていう。私の先生は精神論しか教えてくれなかったんですが、たぶんこの方もパーツの取り方うんぬんとか言ってくれたわけではないと思うんですよ。そういったところが自分と重なるというか。中でも印象に残っているシーンは、先生が最後に『描け!』って言うんですね、一言。とにかく描くことに向き合えってことなんだと思いますが、グサッときますね。私はミュージシャンなんで、私の場合『歌え!』ということになるんでしょうが、もうそれしかないじゃないですか。ひたすらやり続ける、その努力を重ねることしかありません。そういう何かをやり遂げたいと思っているすべての人には絶対読んでほしい作品ですね」



------大森さん、ありがとうございました。


<プロフィール>
大森靖子 おおもりせいこ/1987年、愛媛県生まれ。シンガーソングライター。

武蔵野大学在学中の19歳の時、友人のバンドイベントに人数合わせでライブ出演したことがきっかけで音楽の世界に。そのイベントでは、ギターでライブに参加し、すでに書き留めていた曲を数曲披露。以来、毎月ライブを行うようになった。2014年にメジャーデビュー。楽曲のほとんどの作詞・作曲を手掛ける。