美食家の多いイメージのあるフランス。朝・昼・晩ごはん共に、趣向を凝らしたものを食べているのかと思いきや、その朝ごはんに関しては、いたってシンプルだといいます。



 たとえば、パリのカフェの朝ごはんのメニューは、大きく分けて2種類。ひとつは、"プティ・デジュネ・アングレ"や"プティ・デジュネ・アメリカン"と呼ばれる、イギリス風(アメリカ風)朝ごはん。温かい飲み物とタルティーヌに、卵料理やチーズ、シリアル、フルーツサラダなどがついてくるボリュームたっぷりのセットです。

 

 ちなみにタルティーヌとは、フランス式のオープンサンドイッチのこと。日本でも馴染みのあるバゲットを、手の平にぴったりと収まる細長い形になるよう縦に切るのがポイント。これにより、外側の香ばしい皮がお皿のような役割を果たし、柔らかい身の方にバターなどをたっぷり塗っても穴が開くことなく食べることができるそうです。



 そしてもうひとつは、コンチネンタル・ブレックファーストの"プティ・デジュネ・コンチネンタル"と呼ばれるもの。フランス語では、"プティ・デジュネ・ア・ラ・フランセーズ"もしくは"プティ・デジュネ・クラシック"とも言われる、温かい飲み物とタルティーヌのセット。



 パリのカフェのなかでも観光地エリアならば、これら2種類の朝ごはんメニューがあるものの、下町のカフェになると後者のフランス風朝ごはんセットしか置いてない場合も多いとか。



 また家庭においても、後者の朝ごはんが主流。バターとコンフィテュール(ジャムのようなもの)を塗ったタルティーヌにカフェオレというシンプルな朝ごはんをとる家庭がほとんどだそうです。



"美食の国"の人々のシンプルな朝ごはん。しかし、そこにはフランス人の独特なこだわりが垣間見えるのだと、本書『フランス人とパンと朝ごはん』の著者・酒巻洋子さんはいいます。



 たとえばタルティーヌの切り方、焼き方はもちろん、タルティーヌに塗るコンフィテュールにも、それぞれの家庭でこだわりがあるとのこと。スーパーなどにもさまざまな種類のコンフィテュールが売られているそうですが、フランスでは庭に果樹を植えている人が多いため、庭付きの一軒家に住んでいる人は収穫したフルーツでコンフィテュールを手作りするのが一般的。



「どこの家でも、その作り手ならではの蘊蓄があるもので、フルーツに対する砂糖の割合とか、保存の方法だとか、どんなフルーツで作るか、さらにはどのフルーツを組み合わせると美味しいかなど、コンフィテュール談義は尽きることがありません」(本書より)と酒巻さんはいいます。



 作ったコンフィテュールは瓶に詰めてしっかりと密閉し、保管場所の暗室へ。田舎の家には、地下などにワインなどを保管するカーヴのあるところが多く、コンフィテュールの瓶もそこにずらりと並んでいるそう。翌年のフルーツの収穫時まで、毎日朝ごはん時に活躍するのだといいます。



 シンプルでありながらも奥深い、フランスの朝ごはんの世界を覗いてみませんか?