BOOKSTANDがお届けする「本屋大賞2016」ノミネート全10作の紹介。今回、取り上げるのは住野よる著『君の膵臓をたべたい』です。



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「昨日テレビで見たんだぁ、昔の人はどこか悪いところがあると、他の動物のその部分を食べたんだって」

「それが?」

「肝臓が悪かったら肝臓を食べて、胃が悪かったら胃を食べてって、そうしたら病気が治るって信じられてたらしいよ。だから私は、君の膵臓を食べたい」



 盲腸の術後の抜糸のために訪れた病院、そのロビーのソファの上に置き去りにされていた一冊の本。元来の本好きの性分から、思わず手に取ったその本には"共病文庫"というタイトルがつけられ、手書きの文章が綴られていた。



 そして、そこには膵臓を患っていること、余命幾許もないことが記されていた。



 自他共に認めるクラスでも地味な存在、小学校以来友だちもいない高校2年生の僕が偶然目にした共病文庫の持ち主は、いつも明るく溌剌としているクラスメイト・山内桜良のものでした。



 同級生が余命僅かだという事実に驚く僕。そして家族以外には打ち明けていなかった病の事実を、僕にだけ打ち明けた桜良。共病文庫をきっかけとして、二人の間に交流が生まれます。

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