2011年の東日本震災発生時、その"神"対応が脚光を浴びたことも記憶に新しい、東京ディズニーリゾート(TDR)。数万人のゲストを、安全かつ迅速に避難させただけでなく、各キャストの判断でお土産用に販売していたお菓子を無料で配布したなどの"感動サービス"も話題となりました。



 そんな感動サービスを実現させる"夢の国"を動かすシステムを、漫画でわかりやすくご紹介しているのが、書籍『マンガでよくわかる ディズニーのすごい仕組み』。



 原作者の大住力(おおすみ・りき)さんは、株式会社オリエンタルランドで働いたのち、難病と闘う子どもとその家族への支援を行う公益社団法人「難病の子どもとその家族へ夢を」を設立。同法人の代表理事も務めるほか、『一生の仕事が見つかる ディズニーの教え』(日経BP社)など著作も多数執筆しています。



 大住さんによれば、TDRの感動対応を実現させているのが、確固とした「マニュアル」の存在。たとえば、以下のような都市伝説を、インターネット上で1度は目にしたことがあるのではないでしょうか?



「若いご夫婦がレストランに入り、最初は2名用のテーブルに案内されたものの、お子様ランチを注文。お子様ランチは子どもにしかお出しすることができず、困ったキャストが事情を聞くと、その日が亡くなった娘さんの誕生日だったと言うのです。これを聞いたキャストはご夫婦を、4名用のテーブルに案内し直し、お子様の椅子をセッティング。お子様ランチをお出ししたという話です」(同書より)



 大住さんは、「じつはこの話は、私がディズニーランドで働いていたときに起こったことなのです」(同書より)と述べ、この逸話が広まるときに、多少尾ヒレがついたことは認めつつも、都市伝説ではなく、実際に起こった実話だと明かしています。



 一体なぜ、このような感動対応ができたのか?という質問に、そのキャストは「私の本当の仕事は、ウェイトレスではなく、『ギブ・ハピネス』を行うことですから」(同書より)と答えたそうです。



 ちなみに、この「ギブ・ハピネス」とは、「ゲストに幸せを提供する」というディズニーの理念のこと。



 一般的には、マニュアルというと、紋切型の接客や、味気ないサービスという、ややネガティブな印象を受けがちです。しかし、大住さんは、マニュアルがきっちり守られることで、キャストは業務に余裕を持って働くことができ、この余裕があることで、"目の前にいるゲストに『ギブ・ハピネス』を届けるにはどうしたら良いか"を自分の頭で考え、行動することができるのだと解説しています。



 TDRの最前線で20年に亘り働いてきた大住さんが、ディズニーのエッセンスを紹介した同書は、接客やサービス業はもちろん、一般のビジネスパーソンこそ活用したい仕事哲学が詰まった1冊となっています。