「もしも、○○したら一体どうなるんだろう?」といった想像は誰しもがすること。本書『ホワット・イフ?』は、そんな「イフ」を集めた1冊。



 著者は米クリストファー・ニューポート大学で物理学を学び、後にアメリカ航空宇宙局(NASA)でロボット開発に携わった経験を持つ、ランドール・マンロー氏。2006年にNASAを退職、インターネットコミック作家に転身し、ウェブ上に投稿される突拍子もない空想的な質問に、持ち前の科学的、数学的理論を用いて回答するように。本書は、そのようにして多数寄せられた質問の中から、マンロー氏が特に気に入っている質問を集めて書籍化したものです。



 例えば本書では、こんなトンデモな質問も。



「普通の使用済み核燃料プールで泳いだらどうなるのでしょうか? 潜水さえしなければ、致死量の放射線を実際に浴びたりはしないのでは? ずっと水面にいるとして、どれくらいの時間なら安全ですか?」



 この質問にランドール氏はズバリ、こう答えます。



「あなたがそこそこ泳ぎがうまいと仮定すると、立ち泳ぎ状態で10から40時間ぐらいは生き延びることができるだろう。それを過ぎると、あなたは疲労で気を失い、おぼれてしまうだろう、このことは、水底に核燃料がないプールについても言える」



 少し回りくどい表現ですが、要は核燃料プールで泳いでも、特に問題はないだろうとの回答。プールの底にある核燃料に触れてしまえば「死んでしまっても不思議ではないほど被爆するだろう」(本書より)と予想していますが、核燃料に触れたり、近づきさえしなければ水による放射線遮蔽効果で「好きなだけ泳いで大丈夫だろう」(本書より)と分析します。



 科学的見地から、こう結論付けたランドール氏ですが、念のために研究用原子炉で働いている友人に連絡し、誰かがプール型研究用原子炉で泳ごうとしたらどうなるか訊ねたといいます。その友人の反応は以下のようなものだったとか。



「『うちの原子炉で?』と言ったあと、彼はちょっと考えていた。そしてこの答えた。『まあ、すぐには死ぬだろうね。水に入らないうちに、撃たれてね』」(本書より)



 同書ではこの他にも、

「地球にいるすべての人間ができる限りくっつきあって立ってジャンプし、全員同時に地面に降りたら、どんなことが起こりますか?」

「光速の90パーセントの速さで投げられた野球のボールを打とうとしたら、どんなことが起こりますか?」

「どのくらい超新星に接近したら、致死量のニュートリノ放射を浴びられますか?」

「Facebookのプロフィールのうち、死んだ人のものが生きている人のものより多くなることがあるでしょうか? あるとすればそれはいつごろでしょう?」



 といった、想像力豊かな質問が並び、それに対しランドール氏はユーモアたっぷりに、また説得力を持って解説していきます。様々な知的好奇心をくすぐる一冊、興味のある方はご一読してみてはいかがでしょうか。