世界第1位と第2位の経済大国である、アメリカと中国。両国といかに関係を築いていくかは日本政府にとって重要な問題であり、また民間企業においても、市場を拡大する上で、両国への理解を深めることが必須ともいえるのではないでしょうか。



 三井物産に勤め、アメリカと中国、両国にて商社マンとして活躍し、多くのアメリカ人、中国人たちと接してきた遠藤滋さんは、新著『中国人とアメリカ人』の中で、自らの経験を踏まえて次のように述べます。



「アメリカ人と中国人は意外に似ている点が多い。両国とも国土が広く、国民性について概括するのは難しいが、少なくとも、中国人はわれわれ日本人よりもアメリカ人に似ている点が多い。このことは、米中両大国の狭間で生きていかなければならない日本を考えるとき、そして両国間でビジネスをする我々にとって重要である」(本書より)



 本書では、遠藤さんが長年に渡り培ってきた経験や多くの事例をもとに、アメリカ人・中国人とビジネスの場でどのように交渉していけばよいのか、交渉をする際に気をつけなければならないこと等、具体的なポイントを指摘。また遠藤さんがアメリカ人や中国人の友人たちに聞いた、日本人はどのようにみられているのかといった日本人観に関する意見の数々も紹介。両国と関わりを持つうえで知っておくべきビジネス論が展開されていきます。



「欧米人も中国人も、右手で握手しながら左手はいつでも相手を殴る体勢をとることができる」(本書より)という両国。まず本書は、アメリカ人と中国人の共通点について分析するところから始まります。



 自分中心、全ての物事について現実主義者、とっさに自分の実利と損得がどうなのかをチェックできるという点に加え、共通点のひとつとして挙げられるのは、集団よりも「個」が先んじるという点。



 遠藤さん曰く"永い過酷な歴史に翻弄されたために、頼れるのは自分だけだという意識が強い中国人"と"一人一人の個人が集団を組織し、それが州へと発展し合衆国を作ったアメリカ人"。いずれも、「個」がその原点にあり、個に益すると考える場合は集団に参加するものの、成果がでたらまた個に戻るのだといいます。



 そして日本人に必要なのは、こうした強い「個」。集団あっての自分という視点から脱却し、強い「個」を持つ姿勢、つまり「We」ではなく「I」の姿勢を持たなければ世界には通用しないと指摘します。奇しくも、世界で活躍するサッカー日本代表の本田圭佑選手と同じことを遠藤さんは言っているのです。



 長年、米中の狭間でビジネスを行ってきた遠藤さんだからこそ、伝えることのできる、具体的なアメリカ人・中国人の考え方や行動の仕方。世界に通用するビジネス国際人になるための要点が凝縮された1冊となっています。