大型書店から、商店街にある小さな書店まで、2014年現在、日本全国にある新刊書籍・雑誌を扱う書店は約14000店。それらに加え、コンビニ、ネット書店、電子書店......と、出版不況が叫ばれる一方で、私達が本を買う状況は日々多様化しています。



 そんな状況の下、みなさんは本を「どこで買うか」、「いつ買うか」について考えたことはあるでしょうか?



 過去50年間で4万冊もの本を購入しているという出版社社長で編集者、作家の中川右介さんは、本書『出版社社長兼編集者兼作家の購書術』のなかで、自分にとっても出版界全体の利益にもつながる本の買い方があると語ります。



 たとえばある本を買おうと思っていても、発売からしばらくたって本屋に行ってみると、目当ての本はもう置いていなかったという経験をお持ちの方もいることでしょう。しかし、その本は、売れたために本屋からなくなったわけではないのだそうです。



 日本には本を作っている出版社は約3700社あり、月に7000点弱、1年間では約8万点の新刊が出版されているとのこと。その量の多さから、新書や文庫であれば「今月の新刊」であるうちは平積みされるものの、翌月には1冊だけ棚に残され、売れ残った半分近くは版元に返品されることに。そのため、すぐに書店の店頭から消えてしまうのだと中川さんはいいます。



 また「いつ買うか」は、その本が増刷されるか否かに大きく作用するため、著者や版元にとっても重要なのだと指摘します。



「『増刷』されるかどうかは、だいたい最初の数週間で決まる。逆にいえば、その期間内に『増刷決定』とならないものは、よほどのことがない限り、増刷にはならない」(本書より)



 著者や版元にとって、読者が発売直後に買う1冊は、発売から3ヶ月後に買う1冊よりも重みが増すのだそうです。気になる本を買う前に、まずは本書を読んで、本の買い方について考えてみるのもいいかもしれません。