2014年に創立60周年を迎えた、成城大学文芸学部。それを記念して昨年5月に行われたシンポジウム「〈西洋美術史を学ぶ〉ということ」の様子が同名タイトルで一冊の本となりました。



 シンポジウムに登壇したのは、美術史を専門とし、同大学で教鞭をとってきた高階秀爾さん、千足伸行さん、石鍋真澄さんの三名。それぞれの美術との出合いのほか、西洋美術史を学ぶ意義について、さまざまなことが語られていきます。



 経済や法学、医学といった他の学問に比べ、趣味の世界だと言われがちな美術史という学問分野。学生時代に、その美術史を専門的に学ぶことには、どのような意味があるのかと疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。



 本書の中では、なぜ美術史を学ぶのかという問いを考えるうえで、美術史の特徴である「もの」を扱うという側面に焦点が当てられます。



「その時代の美術作品というのはそれぞれの時代や場所の証言を持っています。物でありますけれどもただの物ではない、過去を背負った物なんです」と述べるのは、高階さん。そして次のような例を用いながら、美術史の役割を説きます。



「例えば、関ヶ原の合戦の時の徳川家康と真田幸村が現在に来て、あの時こうだったと証言してくれれば非常に面白い。しかしその時の人はもういない。けれどもその時の物は残っているわけです。物はその時の、関ヶ原どころか平安時代、卑弥呼の時代の物が残っている。それは単なる物だけれども、それに証言をしてもらうことができます。ただ、普通は沈黙している証人ですから、その証人に語らせなくてはならない。美術史の役割はそれなんです」



 あるいは、千足さんは次のように言います。



「(中略)Art History(美術史)と言った時、Artの中身はアーティストの歴史でもあるし、作品の歴史でもある。それからルネサンス、バロック、ロココといった様式の歴史でもあるし、技法の歴史でもある。また、『精神史としての美術史』、つまり人間の精神の歴史、その時代の思想、ものの考え方が美術作品には反映しているのだという考え方もある」



 過去を背負っている残された物をしっかりと鑑賞し、研究して読み解いていくことは、当時の時代や社会、考え方を学ぶことにも繋がるのだということ。沈黙している証人の声を聴くことの重要性を伺い知ることができます。



 美術に興味のある方はもちろん、これから美術史を学ぼうと思っている方々にも刺激的な内容となっています。