普段あらゆる場所で目にする広告。IT他、各種技術の発達に伴って、多種多様な表現方法を駆使した広告が日々、出現しています。



 では、そうした広告の制作側の場にいる人々は、いま何を考え、数々の広告を世の中に打ち出しているのでしょうか。



 本書『電通デザイントーク Vol.2』は、3つのセクションによって構成され、Session 1「アイデアの種をどう育てるか」として、小山薫堂さんと澤本嘉光さんによる対談、Session 2「広告を拡張する」として、川田十夢さんと阿部光史さんによる対談、そしてSession 3「つくる機会をつくる」では齋藤精一さん、中村勇吾さん、飯田昭雄さんによる、実際に制作している側からの、広告を巡る対談を収録しています。



 それぞれの形で広告の世界に携わり、第一線で活躍されている7人。今まで行ってきたプロジェクトやその経験から学んだこと、これから行おうとしていること等、時に専門的な議論が交わされていきます。



 では実際に、これからの広告について、7人の人物たちはどのような視点を持って見ているのでしょうか。



 たとえば、くまモンの生みの親としても知られる放送作家・脚本家である小山薫堂さんは、広告においては「まずは楽しいということが一番大切」だとし、広告のあるべき姿について次のように述べます。



「これは広告業界のこれからの課題だと思うんですけど、広告するから売れると、いかにクライアントにそう思わせないかっていうことが、生き残っていくために大切な気がするんですよ。そうしないと、売れない広告は意味がないということになってしまって、それこそつまらなくなるじゃないですか」



 対談相手である、ソフトバンクモバイルの「ホワイト家族」等の話題CMを制作している電通の澤本嘉光さんも、広告の良いところは「モノを売るのと同時に、モノを買わない人も喜ぶこと」なのだと述べます。



「(中略)モノを売る行為についてくるイメージとか情報が楽しいのが広告だと思うんです。(中略)広告をやるときに付帯でついてくる、人を楽しませることが広告の役割だと思うし、やらなきゃいけないと思うし、それができるのがプロだと思います」



 さらに他のセクションにおいては、「あくまで商品や人や企業が面白いから、それを広告するんだという考え方でなければいけない」(川田十夢さん)といったように、売れることを狙った面白さを優先するのではなく、元来その商品自体に内在する面白さを理解したうえで、広告していく姿勢を持つことの大切さが説かれていきます。



 売れる/売れないという基準から一度離れた地点に立って、人を楽しませる広告を制作していこうとする姿勢。それこそがこれからの広告の鍵となってくるのかもしれません。