元日本テレビの夏目三久さん、元フジテレビの八木亜希子さん、高島彩さんなど、フリーに転身後もテレビの世界で大活躍している女子アナのみなさん。"馬場ちゃん"の愛称で親しまれた元日本テレビアナウンサーの馬場典子さんも、そのひとり。17年間にも及ぶ日テレ社員時代に、スポーツ、報道、バラエティなど、数多くの人気番組でキャスターを務め、その間に多くのニュースを彼女の声で耳にする機会も多かったですが、彼女の"生の声"を聞くことはありませんでした。



 本書『ことたま』は、フリーに転身したばかりの馬場さん、初の書き下ろしエッセイ。「なぜアナウンサーになったのか」、アナウンサーになって「学んだこと」「教わったこと」、さらに「いまのこと」「これからのこと」など、今まで明かすことのなかったアナウンサー人生17年間の想いが綴られています。



 本書執筆の理由について、馬場さんはこう書いています。



「≪言葉≫を扱うアナウンサーとして教わったことは、同時に、一人の人間として、大きな力になるものでした。落ちこぼれアナウンサーだった私が、向いているのだろうかと自問自答ばかりしていた私が、ずっとこの仕事を続けていきたいと思うまでになりました。(中略)これまで私が頂いてきた言霊ほどの力はなくても、誰かに優しく寄り添える≪ことたま≫を贈れたら。そんな想いをこの本にしたためました」(本書より)



 また馬場さんは、キー局の女子アナウンサーという華やかな職業に就きながらも、入社からしばらくは「華やかさを求められたことが一番の戸惑い」だったと語ります。なんと、当の本人は、「地味採用」だと思っていたとのことで、入社当時はメークなども「申し訳程度の薄いもの」(本書より)だったと告白しています。



「あまりに地味だったからか、若者らしいキャピキャピ感がなかったからか、新人のときにある週刊誌で、『趣味は盆栽』と書かれたこともありました。砂漠に生きるサボテンをこの東京砂漠で枯らしたことがあるほどで、盆栽を趣味にしたことは未だかつてありません」(本書より)



 しかし、馬場さんは入社一年目から、人気歌手の歌を歌ったり踊ったり、有名俳優の扮装をしたり、番組のロケで過剰なリアクションをとったり......とタレントのような役割を演じなければなりませんでした。もちろん、いざやるときは一生懸命やり、楽しかったと馬場さんは振り返ります。しかし、それらの仕事を「自分の表現」として昇華することは難しく、「これもアナウンサーの本分」と頭の切り替えができるようになるまで、入社から何年もかかったとも言います。



 今年、二度目の成人式の40歳を迎え、新たな挑戦を始めた"等身大の馬場典子"が本書には登場します。そして、そんな本書の帯には、こう書かれています。



...幸せは、自分のこころが決める

今が一番幸せ。