学校教育におけるデジタル化は今後、進むことが予想されていますが、全児童・全生徒に1人1台のタブレット端末が与えられる日も、そう遠くないのかもしれません。



 実は現在、富山大学人間発達科学部附属小学校では、児童・生徒に1人1台のタブレット端末を配布。さらにデジタル教材、電子黒板、プロジェクターなども用意し、学校生活での日常的なICT(情報通信技術)活用について検証する実験を行なっています。



 今の子どもたちは、幼い頃からデジタル機器に慣れ親しんでおり、親よりもタブレット端末の扱いに慣れている子どもも珍しくありません。そんなデジタルネイティブの子どもたちを豊かに育てるには、教育現場でのデジタル導入も必然なのかもしれません。



 NPO法人CANVAS理事長であり、株式会社デジタルえほん代表取締役として活躍する石戸奈々子氏は、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員研究員を経て、子ども向け創造・表現活動を推進する NPO「CANVAS」を設立した人物。2000回を越えるワークショップには約30万人の子どもたちが参加した実績がありますが、そんな石戸氏が、自著『子どもの創造力スイッチ!』のなかで「2020年のデジタルキッズのある1日」を予想しています。



 石戸氏が想像する、6年後となる2020年の小学1年生の生活とはどのようなものなのでしょうか?



 2020年の算数の計算問題では、タブレットパソコンが普通に活躍。算数が苦手な生徒には、前日に間違えた問いが出題され、得意な生徒には学年を飛ばした問題を出題されるなど、生徒に合わせた問題の出し分けが可能になります。先生は生徒全員の進捗具合をパソコンでチェック。採点はパソコンがやってくれるので、先生は問題に詰まっている生徒から順番に個別指導をすればよく、効率良く授業が進みます。



 皆で育てているアサガオは、24時間ウェブカメラを使って撮影。夜中の開花の瞬間も録画されているので、必要なシーンを取り出して電子黒板に映し出し、生徒皆で確認することができます。



 絵の授業では、世界中の花の絵にアクセス。自分の好きな絵を見つけたら、それを参考にして自分のアサガオの様子をパソコンのお絵かきソフトでイラストにし、アニメソフトを使って、アサガオの成長をアニメ化にすることも可能です。「バーチャル子ども美術館」に展示すれば世界中の人に作品を届けることができ、世界中の子どもたちが描いた絵や撮影した写真を解説付きで見ることもできます。解説は翻訳機を使うと日本語で読めるので、自身の作品と世界中の子どもたちの作品を比較し学ぶことができるのです。また、これら授業の様子は映像でアーカイブされているので、「アサガオのアニメづくり」など学校での子どもの姿を、両親が自宅で楽しむこともできるのです。



 石戸氏の想像する2020年の子ども教育の世界は、とても楽しそうに思えます。



 教育のデジタル化は賛否両論ありますが、学校側や親の発想次第では、とても有意義なものとなるのではないでしょうか。もちろん、デジタルの世界は急速に発達しているので、石戸氏の想像を越える世界になる可能性があることも忘れてはいけません。