もし、あなたが転職や独立を考えた時、まず誰に相談しますか。普通の人なら、会社の仲間、学生時代の先輩、親、友人など親しい人の顔が思い浮かぶのではないでしょうか?



 しかし、そのような相談は親しい人にするより、むしろさほど親しくない人に相談した方が、よい情報が得られるという考え方があります。



 ジャーナリストの佐々木俊尚さんは、新著『自分でつくるセーフティネット』で、ある理論を紹介しつつ、こうした相談相手のベストチョイスについて言及しています。



 その理論とは、アメリカの社会学者マーク・グラノベッター氏が1973年に、ハーバード大学博士課程に在学中に提唱した「弱いつながり(ウィークタイズ)」。グラノベッター氏は、誰かが転職や独立をしようと考えた時、実際に役に立つ情報はどこから流れるかについて調査し、その結論、「弱いつながり」からのほうが多いということがわかったそうです。つまり、ネットで知り合った人や、パーティーや集まりで名刺だけを交換した人、また、年賀状だけを交換している学生時代の友人などの方が、家族や親友など親しい間柄の人たちよりも"いいネタ"を提供してくれるというのです。



 普通に考えると、つながりの強い人の方が有益な情報をくれそうなものですし、そもそもつながりが深い分、困っている時に助けてくれるように思います。



 しかし、本当にそうでしょうか。



 たとえばインターネット。ツイッターやフェイスブック上での質問や疑問に、とくに仲が良いわけでもないのに、一生懸命教えてあげる人がいます(なかには赤の他人が答えることも)。ヤフー知恵袋などでも、かなりの長文で質問者に応えようとしている人もいます。グラノベッター氏の提唱する「弱いつながり」理論と同じ状況が、今、実際にあるのです。



 佐々木さんは同書にて、こう言います。



「強いつながりだと、情報はその関係の中でぐるぐる回るだけで、新鮮な情報って意外と少ない。実際、社内の人と飲みに行っても人事情報とか仕事の具体的な話とか、毎回おなじようなことを言いあってるだけで、新鮮味がないなあと思うことは多いですよね」





「弱いつながりのほうが、ずっと新鮮な情報が流れやすい。そりゃそうです。だって弱いつながりってことは、相手と自分の共通点が少ないってことだから、自分の知らない情報を相手が持っている可能性はとても大きい」



 転職や独立をしようと親しい人に相談しても、解決策が見つからず悩んでいる人は、「弱いつながり」を頼りにすれば突破口が見つかるかもしれません。