夏の陽気が近づき、半袖半ズボンの涼しげな格好が目立ってきた今日この頃。夏に向けてダイエットに励んでいる方もいるのでは? しかし、ダイエット中こそ人が食べているものが美味しそうに見えたりして、食べることを我慢するのが辛いですよね...。



 お笑いタレントでありラジオパーソナリティでもある伊集院光さんは、そんな"過酷な状況"がむしろ大歓迎なのだとか。自身の著書『のはなしし』の中で伊集院さんはこう語っています。



「ダイエット中、食事制限をしている僕の目の前で、僕の大好物、しかもハイカロリーな食べ物を、もりもり食われるのが...好きだ」



 自分はダイエットをしているのに、後輩芸人に目の前でステーキとフライドポテトを食べさせ、自分は目の前でサラダバーのみを食べる。一見理解し難い、Mっ気の強い行動に思えますが、その行動は過去のある経験に基づいたものでした。



 本書の中で、伊集院さんはこんなエピソードを披露しています。



 その昔、伊集院さんが場末感満載の定食屋で昼食をとっていた時のこと。突然、かなり酔ったよれよれのおじさんに、自分のおごりでエビフライを食べて欲しいと言われたそうです。

 

 そのおじさんは

「子供の頃はエビフライなんて無かったが、東京に出てきてその存在を知って虜になった」

「ソース以外かけちゃだめ」

などのエビフライへの愛を長々と語りました。



 そして、最終的に

「自分は胃が悪くてもうエビフライを食べられないが、あんたならわけ無く食えるだろうから、食うところを見せて欲しい」

と言われたのだとか。



 そんなおじさんの気持ちと、自分の気持ちは似ているところがあると思う、と伊集院さんは語ります。誰かに自分の食べたいものを食べてもらい、それを見ることで自分の欲望が満たされるのだそうです。



 本書では、伊集院さんが語る何気ない日常をまだまだ感じることができます。ラジオパーソナリティの"伊集院光"とは違って、大爆笑するわけでもないちょっと笑える話や、大号泣するわけでもないちょっとぐっとくるいい話など、他愛のない話を短編で多数掲載した『のはなしし』。



『のはなし』シリーズ4巻目ですが、本書から読んでもシリーズについていけないということはありません。むしろ、『のはなし』シリーズの魅力にはまること間違いなし、な一冊となっています。