ネット掲示板には、毎日様々な"おもしろエピソード"が投稿されています。しかし、そこに溢れる刺激的な経験談や武勇伝は、「ネット釣り師」の創作である場合が多いといいます。



「ネット釣り師」とは、自ら創作したエピソードを掲示板に投稿し、読者の反応を楽しむ人達のこと。いわばネット上の愉快犯のような存在です。



 嘘の話に騙されるほうが悪い、という意見もあるかもしれません。また、一見、嘘の投稿であればすぐに見破られるだろうと思うかもしれません。しかし、ネット釣り師の人を騙す技術は非常に高く、何年もネット掲示板を利用している人でも見破ることは難しいのです。おそろしいですね、こわいですね。



 ネット上の「釣り」行為を15年以上、眺めてきた人気ブロガーのHagexさんの著書『ネット釣り師が人々をとりこにする手口はこんなに凄い』は、そんな釣り師の驚くべき文章テクニックについて分析した一冊。



 Hagexさんは、釣り師についてこう語ります。



「多くのネット釣り師たちは、金銭的な見返りもないのにもかかわらず、時間をかけてエピソードを創作し、文章を整え、『2ちゃんねる』『発言小町』『はてな匿名ダイアリー』といった掲示板に投稿する。読者からの反応があれば丁寧に対応し、数日、時には数ヵ月にわたって投稿していく。読者たちは釣り師が作るエピソードの続きが気になり、毎日何度もアクセスしてしまう」(本書より)



 著者は釣り師に対して「嘘をつくけしからん奴ら」と糾弾するのではなく、むしろ、無償のエンターテイメントを提供し、彼らのおかげでネット掲示板は盛り上がっていると好意的に捉えています。



 その一方、著者はネットリテラシーを身に付けるため、そして、これまで以上にネット掲示板を楽しく利用するために、釣り師の嘘を見抜く能力も重要だとも指摘しています。彼らの嘘を見抜くだけのスキルを身に付けることが出来れば、不確かな情報で溢れているインターネットをこれまで以上に使いこなせるというのです。これはもう、スキルをつけるしかありませんね。



 なお、Hagexさんによると、釣り師が嘘の投稿をする理由は以下の4つに分けられます。

① 人から注目されたい

② いたずら・ストレス解消・暇つぶし

③ 自分の文章力・釣り師としての実力を試したい

④ 金銭をもらっている



 ネット掲示板に潜んでいる釣り師は、ほとんどの場合、上記の4つの理由で「釣り」を行っているとか。そして、釣りを行っている理由によって、嘘か否かを見破る方法は変わってくるそうです。



 その書き込みが真実かどうか。まるっと鵜呑みにする前に、釣り師のことを頭の片隅に思い浮かべてください。彼らは、PC画面の前で、釣られているネットユーザーを見てはほくそ笑んでいますよ。