「ぼっち」とは、友達がいないひとりぼっちを意味する言葉。そんなぼっちのため、テーブル席メインの大学食堂に1人用席「ぼっち席」を設ける大学が相次いでいます。2012年の京都大学を皮切りに神戸大学、大東文化大学、学習院大学など全国に広がりをみせ、いずれも学生たちに好評だといいます。



「ぼっち席」が好まれる背景には、若者の対人関係が苦手でありながら、ひとりぼっちには見られたくないという心理が深く影響しているそう。大学側は、学生のニーズに応える形で、テーブル席に仕切りを設置するなどした「ぼっち席」の導入に乗り出しました。



 ぼっちは「悪いこと」ではない。そのスタンスは理解できます。しかし、その一方で、学生生活の醍醐味である"交流"や"出会い"が失われる可能性も大いにあります。「ぼっち上等」で学生時代を過ごした人が、友達作りのハードルがより高くなる社会人になった時、どうなるでしょうか? たった4年間の大学生活とは違い、社会人生活は長いのです。



 そんな由々しき状況を打開するヒントを与えてくれるのが、カルチャー雑誌『ケトルvol.19』です。特集のテーマは「カウンターの店」。これまで幾多の雑誌が料理や酒をメインにカウンターの店を特集してきましたが、同誌ではカウンターの店の持つ臨場感や店主、隣の人とのコミュニケーションにまで焦点をあてた異色の記事を掲載しています。



 例えば、東京・都立大学にあるカウンター席のみのワインバー「マルカン」は、こう紹介されています。



「一人でしっとりと飲む人もいるけれど、お客さん同士の会話が弾む場です。一見さんでも店員さんが常連さんとつないでくれるので安心(中略)いつしか知り合いができ、マルカンでの再会がきっと待ち遠しくなるはず!」(同誌より)



「マルカン」をはじめカウンターの店には、たとえ人見知りでコミュニケーションが苦手でも、店主と常連客の連携が取れており、客をひとりにしておかない特徴があると同誌は伝えています。



 その過程で自然と交流が生まれ、知り合いや友人という仲に発展させてしまうのは、カウンターの店がなせる技なのでしょう。一見、常連客が通い詰めるような入りにくいカウンターの店にこそ、「ぼっち」から脱出できる糸口があるといえそうです。さらに、晴れて"脱ぼっち"したあかつきには、今度は常連客として「ぼっち」を救う日が来るかもしれません。



 ぼっちのみなさん、ぼっち席でひとりの時間を楽しむのもいいですが、是非、カウンターの店に行って新しい自分に出会ってください!





【関連リンク】

『ケトルVOL.19』

http://www.ohtabooks.com/publish/2014/06/14121418.html