富山県・富山駅の「ますのすし」、群馬県・横川駅の「峠の釜めし」、神奈川県・横浜駅の「崎陽軒のシウマイ」、北海道・森駅の「いかめし」など、日本を代表する駅弁の数々。人気駅弁ランキングでは、毎度、どれも上位にランクインするので、ご存知の方、実際に食べたことのある方も多いでしょう。



 鉄道の旅を楽しむ上で、駅弁はマストアイテムと言えます。そもそも駅弁が、日本に初めて登場したのはいつ頃になるのでしょうか。1877年の大阪府・梅田駅(現大阪駅)、同じく1877年の兵庫県・神戸駅、1883年の東京都・上野駅......など諸説ありますが、鉄道ファンの間で通説となっているのは、1885年の宇都宮駅で始まったものだとか(当時、宇都宮で旅館を営んでいた「白木屋」が初めて宇都宮駅で弁当を販売したという記録が残っています)。

 今から129年前に誕生した日本初と言われる駅弁。その中身はとても質素なもので、ごまをまぶした握り飯2個とたくあんを竹皮に包んだもので構成されていたそうです。



 そんな歴史ある日本の駅弁文化ですが、時代と共に消えていったものもあります。旅行気分を盛り上げる「立ち売りさん」です。



 ボックスシートに座り景色を眺め、駅に到着したら、窓を開けてホームにいる立ち売りさんから駅弁を買う。その昔、駅弁と立ち売りさんは切っても切れない間柄でしたが、時代とともに立ち売りさんは、姿を消し、今ではとても珍しいものとなってしまいました。



 書籍『知識ゼロからの駅弁入門』では、そんな立ち売りさんの歴史を紹介しています。



「以前の列車は停車時間が長く、その間に先を争って駅弁やミカンを買ったりしたものだ。列車の高速化で、停車駅が減って停車時間も短くなり、窓が固定されて開かなくなった。となれば、駅売りの需要は縮小する。必然的に、立ち売りさんの姿は消えていったのである。

 今、駅弁は、乗降車するときに駅構内の駅弁専門店や売店で購入するか、車内販売を利用するのがほとんど。肩ひも付きの木箱に駅弁を詰め込んでホームを売り歩く、昔ながらの立ち売りさんが常駐するのは、九州の人吉駅などわずかな駅を残すのみとなった」(書籍『知識ゼロからの駅弁入門』より)



 列車の高速化でその姿を消した立ち売りさん。少し寂しい気もしますが、まだその文化が残っている地域もあります。そんな立ち売りさんを見つけた時は、是非とも窓を開けて大きな声で呼び込んでみましょう。