本日、スピリッツ編集部は、公式サイト上に新たなコメントを掲載しております。鼻血や疲労感と放射線の影響については、「因果関係について断定するものではない」とした上で、「事故直後に盛んになされた低線量放射線の影響についての検証や、現地の様々な声を伝える機会が大きく減っている中、行政や報道のありかたについて、議論をいま一度深める一助になることを願って作者が採用したものであり、編集部もこれを重視して掲載させていただきました」 と説明しています。



 しかし、「議論を今一度深める一助になることを願って」という言葉と、実際に描写されている内容にはかなりの温度差があります。今回の作品を読む限り、「議論を深める一助」というより、ただ差別や誤解しか生まない可能性が高いのではないでしょうか。



 書籍『どうなくす? 部落差別』(緑風出版)は差別がなぜ生まれるのかを丁寧に解説した一冊。東日本大震災以降、福島から避難のため転校してきた子どもたちが小学校で「放射能がうつるから」と忌避され、避難住民がホテルや旅館の宿泊を断られたりすることがありました。もちろん、"放射能がうつる"ということは科学的にあり得ないので、明確な差別になります。



 そうした「差別」が徐々になくなりつつある中での、今回の『美味しんぼ』騒動。問題となったビッグコミックスピリッツの売り上げが気になるところです。仮に売れているなら、作者も出版社も「美味しい」のかもしれませんが、それで傷つく人が多くいるということはしっかり理解しておいた方がいいと思います。