2013年の日本広告業協会(JAAA)の懸賞論文で金賞を受賞した博報堂の岡田庄生さん。コンサルティング局に所属、日々、企業ビジョンや商品開発のコンサルタント業務に携わり、"博報堂きっての若手敏腕コンサル"と言われているとか。

 

 そんな岡田さんが、先頃、『買わせる発想』というビジネス本を上梓しました。同書では、具体的なエピソードを盛り込みながら、従来の「売り込む発想」から「買わせる発想」に転換する秘訣を披露しています。

 

 たとえばこんな話。ある時、岡田さんは、ガソリンスタンドを全国に数多く持つ、巨大エネルギー企業の経営企画部長に会う機会があったそうです。

 若者の車離れやハイブリッドカー、電気自動車の普及を受けて、先行きの見えないガソリンスタンド事業をどうすべきか――岡田さんは部長からこんな相談を受けました。

 

 その際、岡田さんは「銭湯とスパの話」を例に挙げ、こう説明したそうです。

「ガソリンスタンドと同じように、銭湯も全国に多くあるインフラ。しかし、最近ではどこの銭湯も経営環境が厳しくて、先行きが見えない業界です。一方、スパは若い女性に大人気。同じ"大浴場"にも関わらず、銭湯とスパはなぜこんなに違うのでしょうか?  

 もちろん全体的なオシャレ度は違いますが、それよりも『銭湯のおやじ』と『スパの経営者』の発想が根本的に違います。『銭湯のおやじ』は"お風呂は体を洗う所"という従来の発想に基づいていますが、スパの経営者は"お風呂は心を癒す所"という発想で商売をしている。銭湯が本当に生まれ変わろうと思ったら、これくらい根本的な発想の転換が必要です。ガソリンスタンドも同様に、従来の『車にガソリンを入れる所』という発想の延長線上でアイデアを考えてはいけません」(同書より要約して引用)

 

 惰性のマーケティングや営業を捨て、完全に発想を転換して考えなければ、現代の消費者の心(=購買意欲)は動かせない。あらゆる経営者にとって、今までの延長線上で、自社の商品をいかに売り込むかという「売り込む発想」から、お客さんの心理を読み解いて、お客さん自らの意思で買いたくなるような「買わせる発想」への転換が必要である――そう、岡田さんは説いているのです。

 

 とはいえ、経営者にとって、従来の発想を捨て去ることは難しいこと。そことで岡田さんは、「売り込む発想」の壁を打ち壊す「3つの習慣」を身につけることを推奨しています。

 

【第1の習慣】 具体的な事実から考える

【第2の習慣】 事実を深く掘り下げて考える

【第3の習慣】 コンセプトを絞ってシンプルに伝える

 

 相手の心を動かし、「買わせる」ための3つの習慣。同書には、さらに詳しい発想転換術が記されています。経営者の方だけでなく、「ある程度仕事をこなせるようにはなったが、新しいアイデアが浮かんでこない」というサラリーマンにも、十分、参考になる本です。