セブン-イレブンの「SEVEN CAFE」、ローソンの「MACHI cafe」、ファミリーマートの「Famima CAFE」など、コンビニで気軽にコーヒーが楽しめるようになった日本。消費量は、フランスやイタリアを上回る4位で、隠れたコーヒー大国と言えそうです。



そんなコーヒーの起源をご存知でしょうか。諸説あるうちの一つが、エチオピアで始まったという説です。6世紀ごろ、アビシニアン高原に自生していたコーヒーが海を渡り、アラビア半島のイエメンの港に上陸。イスラムの国々へ広がったと言われています。修道僧が、瞑想や祈りを捧げたりする際に飲まれていたコーヒーですが、その後大衆にも伝わっていきました。



「日本では、コーヒーの味わいを堪能するなら"ブラック"で飲むべき、という認識が根強いですが、実は、コーヒーの歴史を振り返ると、人々が工夫を凝らしてコーヒーを楽しむためのさまざまなアレンジレシピを編み出していたことがわかります。身の回りにある季節のフルーツやハーブ、スパイスなどをエッセンスに、コーヒーを愉しむ。それは、客人をもてなすための特別なものでもありました」



こう語るのは、静岡市でコーヒーショップ「IFNi COFFEE STORE」を営む松葉正和さん。雑誌『ecocolo エココロ No.66 (2013 Autumn & Winter) 「もてなす人々」』のなかで、古代の儀式から生まれた「エッセンス・コーヒー」について語っています。



当時のイスラムの砂漠地帯では、物々交換をしながらラクダで土地を移動する「キャラバン」が盛んで、香辛料やハーブ、砂糖、塩などとともに流通していたのがコーヒーでした。キャラバンは、たどり着いた土地の人々に受け入れてもらうためにコーヒーを淹れました。ただコーヒーを淹れるだけでなく、その土地の花や果物を使って、現地の人々をもてなすのが彼らのこだわり。この習慣がやがて、「コーヒーセレモニー」と呼ばれる儀式に発展していきました。



「その土地に咲いている花々や、スパイスや果物を砕いて一緒に煮出したり、ハーブを一緒にドリップしたり。シナモン、ナツメグ、カルダモン、ジンジャー、ターメリックといったスパイス、バターや高価な砂糖が使われることもありました。空間には周辺で摘んできた草花を飾り、香木や香草を焚き、客人の目の前でコーヒー豆を煎り、エッセンス・コーヒーを淹れます。音楽を奏でながら、ダンスをすることもありました」(松葉さん)



本来の味を楽しめるブラックコーヒーが良いとされる風潮がありますが、コーヒーの原点は地元の素材を大事にし、客人をもてなす心にあったと言えそうです。