「離乳期を過ぎても乳を飲み続けている哺乳動物は、猫などのペットを除くと人間だけ」



こう語るのは書籍『なぜ「牛乳」は体に悪いのか』の著者で、医学博士のフランク・オスキー氏です。



多くの哺乳動物は、体重が出生時の3倍になるまで、母乳だけで成長します。それが自然の摂理となっており、人間の場合は約1年です。私たちが飲む牛乳は、本来子牛のための飲み物であるため、子牛にとって最も適した組成となっているもの。私たちは、その牛乳を積極的に摂取するように教えられてきています。



なぜ牛乳はこれほどまでに、私たちの生活に定着したのでしょうか。



食費の7分の1が「牛乳・乳製品」の購入にあてられ、180万頭もの乳牛が飼育されているアメリカでは、酪農・乳業界は巨大産業。政治に対して絶大な影響力を持っており、オスキー氏は上下両院の議員の7人に1人が、再選に必要な支援をこの業界から受けていると指摘します。



全米酪農乳業協会は、下記のような基本戦略をもとにその影響力を行使しています。



■議会に圧力をかけて牛乳の価格を高く維持する

■州と連邦の多くの法律によって利権を守る

■組合に加入している酪農家から牛乳45キログラムにつき5セントを徴収し、牛乳の販促活動に使う



「牛乳が健康によい」とのイメージが大衆に定着し、かつ昨今の不況下でも牛乳・乳製品の売上が落ちていないのは、こういった戦略や政治への"ロビー活動"の結果であると、オスキー氏は語ります。



本来は子牛を育てるための栄養である牛乳は、人間の口に合うように組成成分を"無理やり"変えたもので、アレルギー、下痢、胃けいれん、虫歯、虫垂炎を引き起こし兼ねないと、オスキー氏は持論を展開。最近では、現役の小児科医で組織されているアメリカ小児科学会の栄養委員長が「牛乳の習慣はやめさせるべきか」と題した提案書を発表するなど、牛乳に対する疑問の声も上がっていると言われています。



酪農・乳業界、医学界のタブーに挑戦したことで、アメリカで読み継がれている本書。高まる健康への関心に、新しい視点をもたらしてくれる1冊です。